近代化、グローバル化の概念を精査し、その関係を整理したうえで、今後「社会」をどのようにとらえるべきかを検討した。さらに、そのような社会イメージをもとにすると、どのような社会調査の戦略が有効かを検討した。これまでの社会調査は、国民国家=社会というイメージで行われることが多かった。サンプリングは住民基本台帳や選挙人名簿から行われることが多いため、日本に在住する日本国籍の保有者に限定されがちである。しかし、グローバル化が進む今日、社会の境界線と国家の境界線を同一視することは必ずしも適切とは言えなくなってきている。社会の範囲を国民国家よりも広くイメージしたり、逆に狭くイメージしたり、あるいは国境を横切るような形でイメージすることが研究戦略上必要となろう。このように考えると、今後の社会調査法にとって、国境を越える人々の関係や移動をいかにとらえるかが重要な研究課題となってくることが分かる。さらに社会「移動」や地域「移動」の概念も再考を迫られる。地域「移動」とは転居と同一視されてきたため、国際的な地域「移動」は無視しうるほど小さな確率でしか生じないと考えられてきた。しかしながら、仕事や観光で短期間だけ外国に行くことはかなり頻繁に起きている。このような短期的地域「移動」も社会の変容と分かちがたく結びついている。また、このような視点から考えると、グローバルな階層構造も従属理論が元来想定していたものよりも、もっと複雑なものと考えざるをえない。今後の社会調査の課題の一つは、このような短期的地域移動と社会の関係、およびグローバルなレベルでの社会構造を探求することであろう。
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