1 研究対象と目的:本年度は、ドイツ連邦共和国におけるメディアからの少年保護に関する政策を考察の対象とした。とりわけ、印刷物や映像DVD、音楽CDなど、少年保護の観点からの有体物を媒体としたメディア規制の問題に焦点を絞り、理念と実際の現場での運用に関する諸問題を明らかにすることを目的とした。 2 実績:まず、20〜21世紀に至るまでのドイツにおける「少年保護」政策の歴史的な展開に関して、研究書や専門誌、論文等を通じて調査した。その後、「ドイツ連邦共和国少年有害メディア審査機関」の、少年保護を目的としたメディア審査の理念と実践活動に関して、審査決定書や審査機関の所長、副所長へのインタヴュー(2007年3月実施)を通して研究した。 3 研究成果: (1)ドイツでは、ヴァイマル共和国期後半やヒトラー政権下において、英米文化に熱中する少年を収容所などの特別施設に収容していた。しかもそれは時に「少年保護」の名の下に行われていた。こうした歴史的事例の考察を通して、「保護」という言葉の持つ恣意性と危うさが明らかになった。 (2)ドイツで映像作家および翻訳家として活躍する平坂氏に対するインタヴュー(2007年2月実施)を通して、日本のマンガがドイツ語に翻訳される際に、取り分け性と暴力の表現において、絵の部分だけではなく、台詞や擬態音、更には人物設定などの差し替えけが必要となる事態があること、それらは少年保護に関わる日独両国の考え方や文化的許容度の相違に基づくものであることが、具体的事例により明らかになった。 4 出版原稿準備:研究途中で得た資料、M・グーゼ「民族共同体にとって相応しくない-少年保護収容所」(A-430枚)、P・マイア-「ドイツ連邦共和国少年有害メディア審査機関」(A-417枚)を和訳し、印刷用の原稿として、完成させた。(平成19年度、出版予定)
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