本研究では、ナノ粒子を含む分散液表面に超音波エネルギーを集中させることにより、液表面に微小液柱を形成させて、その先端を「ペン先」として基板表面に走査することで、ナノ粒子集合体から構成される構造体を創製することを目的とする。ナノ粒子の有する融点降下を利用して、これを低温で加熱することにより、所望のナノ構造体を作製することを試みる。この方法を用いると、ノズルを用いずに液柱という「ペン」を用いて基板表面の二次元方向に任意のナノ構造体を作製できる。さらに、多数の容器を準備し、それぞれに異なるナノ粒子分散液を調製するとともに、超音波を各容器に照射することにより、構造体の組成を二次元、あるいは三次元方向へ自由に変えることが可能になる。その結果、従来にない様々な複合構造の微細パターンが実現できるものと期待される。以上の研究目的を達成するための基礎実験として、平成19年度は、平成18年度に試作した実験装置「三次元ナノアセンブリ装置」を用いて、超音波照射が液表面の微小液柱形成に及ぼす影響について検討を行った。その結果、超音波照射の強度を上げると、液表面に液柱を形成できずに表面から微小液滴が発生し、それが基板表面に向けて飛翔することにより、基板上に構造体が形成された。一方、超音波の強度を適度に調整することにより、液表面に微小液滴を形成することができた。さらに、この微小液柱を基板表面に走査することで構造体の形成を試みたところ、基板表面の濡れ性が微小液柱による構造体の形成に大きく影響することが分かった。なお、本研究の実施においては、研究代表者として内藤牧男が、微小液柱による基板表面への構造体形成に関する基礎実験と解析を行った。また、研究分担者として野城清が、基板の界面特性に関する評価を行った。
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