平成20年度は、様々な環境(湖沼や湿地の堆積土、温泉や高塩濃度土壌などの極限環境)から採取した試料からのガス産生微生物の単離およびそのrRNA配列解析に成功した。 鹿児島県屋久島および口永良部島より単離したガス産生微生物株について、マイクロ培養容器を用いた単離法を繰り返し適用して単一株であることを確認し、合わせてガス産生能力についてもその再現性を得た。屋久島土壌については、サンプリング地点として、標高の異なる互いに10m以内に連続した72か所の標本地点からのガス産生微生物の単離を行い、その多様性を検証した。森林、湖沼、高地と環境が移り変わるに従い、ガス産生微生物株の多様性が連続的に変化し、特に多数のガス産生微生物が発見される特異な環境が存在することがわかった。これらの環境では、土壌中から分離可能な全微生物株のうち20〜30%がガス産生微生物であることも明らかとなり、ある特定の気候環境と制限された炭素源を有する環境でガス産生微生物群が優勢に分布できることを示唆している。マイクロ培養容器によるガス産生微生物の単離をこの特異な環境から重点的に行い、また同様にガス産生微生物群が優勢に分布する環境の一つである口永良部島の硫黄泉からも単離を試み、その16SrRNA配列解析を行った。屋久島土壌(標高:463m)から単離した株の16SrRNA配列はBurkholderia属trop ica(strain TNe-865)またはterricola(strain LMG20594T)と高い相同性を有するが、DDBJデータベース上既知のどの微生物とも一致せず、新規微生物として単離されたと考えられる。 この菌株は嫌気環境下でのガス産生を基にマイクロ培養容器の浮上により単離されたが、高度の増殖が困難なため、産生ガスの蓄積および微量の産生ガスの成分の定量分析を現在試みている。
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