研究概要 |
本研究の目的は、がん罹患後の経過のなかで様々な問題に遭遇するがん患者に対する患者図書館を中心とした情報支援サービスのあり方を患者の視点で検討することである。患者の視点という点を考え、まず、がん患者がどういう悩みや問題を抱えているかを把握し、次に、患者を支援するツールとして「情報」を多角的な側面から考えていくこととした。そこで、がん患者の悩みや問題を全人的にとらえるツールとして、筆者自身分担研究者として参加した厚生労働省研究班が実施した「がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」(2003)結果に基づいて作成された「静岡分類(Ver.2)」(大・中・小・細分類の4カテゴリー)を用いることとした。選択理由は、1.調査は、.7,885人のがん体験者が参加した大規模調査である、2.悩みや負担等の実態は、がん体験者自身の言葉で自由記述された文章を整理し体系化したものである、3.カテゴリーは細分化され、細分類は587項目に及び、悩みや問題の内容が具体化されている、の3点である。今年度は、がん患者のニーズを、筆者のこれまでの研究結果と文献レビュー、S患者図書館における利用状況から検討した。その結果、1.がん患者は、病気や治療の情報・医療の質に関する情報を求める一方で、がん罹患や治療の影響による社会生活・日常生活行動上の問題や症状への対応、こころの問題への対応など、多様な悩みや負担等を抱えている、2.Sがん専門病院患者図書館所蔵の医療・福祉関連資料2,100のうち書籍(1,696)の貸出状況(4.5年間:総数12,232冊)の貸出回数上位100タイトルを分析した結果、「闘病記・エッセイ」(総数247タイトル)が36タイトルで一位であり、貸出では体験的知識の資料が好まれていた、3.「静岡分類(Ver.2)」の細分類ラベル(587)に対応する情報を探す場合、患者図書館資料の書名だけでは具体性に欠け、資料の内容を把握していないと情報検索は困難であった。
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