研究概要 |
平成18年度の研究計画は,マスタ・ワーカ(MW)方式と呼ばれる並列実行方式の自動チューニングアルゴリズムの考案,およびその性能評価に取り組むことである.本年度に取り組んだ研究の成果は,情報処理学会HPC研究会および電子情報通信学会総合大会において発表した. 本研究では,MW方式におけるマスタ数およびタスク粒度を,並列プログラムの実行状況に応じて動的に調整し,様々な並列計算環境に自動的に適応させることを目的としている.これを実現するために,プログラム実行時のマスタの負荷に着目してマスタ数およびタスク粒度を調整する並列実行方式を提案した.提案方式では,マスタに到着しているワーカからのメッセージ数を利用してマスタの負荷の表す.具体的には,マスタが一つのタスクの割り当てを終えた時点において,マスタに到着しているメッセージ数の平均が1以上の場合,マスタが過負荷状態にあると判定する. 提案方式の性能を,PC18台から成るPCクラスタ上で評価した.その結果,実行時にマスタ数を増加させることで,タスク割当にかかるマスタの負荷を分散でき,単一マスタでは性能が飽和する場合においても,提案方式では性能飽和を回避できることを確認した.また,タスク粒度を調整することで,MW型並列プログラムの実行開始時にユーザが適切なタスク粒度を設定することなく,適切なタスク粒度を設定したときと同等に良好な性能を得ることを確認した.これらの結果によって提案方式の有用性を示すことができた. 現時点では,マスタ数を調整する方式とタスク粒度を調整する方式はそれぞれ独立しており,両者の併用までは至っていない。両者を併用する方式の性能評価については今後の課題である.また,より簡単に提案方式を並列プログラムに適用できる手法を考案することも今後の課題である.
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