(1)量子化学計算で最もよく使われる密度汎関数法を、SIMD型準汎用プロセッサGRAPE-DRという専用計算機で実行する事で、飛躍的な高速化を目指した研究である。プロセッサは東京大学、国立天文台、理化学研究所で開発中である。6-31G**基底を用い、密度汎関数法でエネルギー計算ができるよう、Coulomb項と交換、相関項の計算を行うアセンブラコード、インターフェースC関数を書きGaussian03と結合した。制御プロセッサに機能が不足している事が分かったので、必要最小限の拡張を提案した。代表分子として、TaxolやValinomycinを選び、非ゼロ寄与を与えるグリッドや原子軌道数の分布を調べた。SIMD型並列計算機に適した、非ゼログリッド選択法、グリッドや基底のprocessorへの最適な割付法を考案した。プログラムを作成し、チップシミュレータを使い、結果の検証と実行時間の予想をした。オリジナルのGaussian03と同じエネルギーを与える事、Coulomb項はPentium4 2.8GHzの約10倍、交換相関項は約40倍の速度が得られる事が分かった。 (2)分子の電子状態を効率良く並列計算するフラグメント分子軌道法(FMO)の拡張を行った。Green関数を使い、この方法を多電子理論として定式化した。図形手法で多体クラスター効果を取り入れる方法を提案した。またGreen関数がFMO法で近似可能である事を示し、励起状態の計算が可能である事を示した。
|