近年日本における食生活は核家族化の進行、単身世帯の増加、さらには女性の社会進出の増加といったライフスタイルの変化により大きく様変わりしており、個々の家庭において調理を行い、消費することは時間的制約により、また費用的にも単身者や少人数の家族のために少量のみ調理することは合理的ではなくなってきている。本研究ではこのような食生活の変化に基づく食料需要の構造変化によって農産物の輸入が増加している状況について社会的厚生の変化を通じて分析を試みている。 このような研究を行うためには農産物に関しては数多くの輸入障壁が存在していることについて考察する必要があり、輸入障壁によって多くの農産物市場において多額の社会的厚生損失が生じていることを実証することを試みている。 農産物の輸入障壁についてはその多くが非関税障壁である。そこで、本研究では非関税障壁の撤廃の影響について考慮しながら食料需要構造の変化による農産物輸入増加と社会的厚生の変化について計量経済学的分析を行う。そのためにはまずミクロ経済学の理論に基づいた需要関数の推定を行い、さらにその上で需要関数のパラメータより求められた効用関数を食生活の構造変化が起こる前と後に分けて考え、その差を社会的厚生の変化として定義して計測する。 このような研究を行うことによって、非関税障壁が消費者の厚生に与える影響、及びその撤廃による効果を分析することが出来、この結果として食料需要構造の変化による農産物輸入増加がどのように社会的厚生への影響をもたらしているのかということが実証的に示されることとなる。 平成18年度はこのような研究を行うための基礎的なデータの収集を行っており、その分析を試みている。
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