本研究では近年の生活スタイルの変化に伴う食生活の変化により、食料需要構造にも大きな影響を及ぼしその結果として農産物の輸入が増加している状況について社会的厚生の変化に基づき分析を行う。そのためには近年まで存在した様々な農産物に対する輸入制限についても考察する必要があり、それらの輸入障壁によって多くの農産物市場において多額の社会的厚生損失が生じていたと考えられる。 本年度は平成18年度に収集した資料や作成したデータに基づいて様々な分析を行った。特に、近年の幅広い食品安全性に関する問題は食品消費、中でも輸入食品に対して様々な影響を及ぼした。そのような危惧の拡大によって輸入品全体への不安が生じているが、その一方で我が国では既に食料輸入なくして食生活が成り立たなくなっており、そのため安全性と経済性とを如何にバランスをとるかが課題となっている。 本年度はこのような消費者の食品安全性に関する認識が政策に与える影響について注目して研究し、(1)消費者は過剰な安全基準を求める傾向にあること、(2)政府は消費者の意向を無視することが出来ず、そのため過剰な安全対策をとる傾向にあること、(3)そのような政策の結果、社会的厚生が低下していること、が示された。このような研究成果の一部については学術雑誌にて「アメリカ産牛肉輸入の政策決定-消費者重視への移行のために-」(『経済政策ジャーナル』)、学会発表にて「安全規制による貿易政策への影響」(日本経済政策学会)としてそれぞれ公表した。
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