研究概要 |
平成18年度においては、主に「日本における都道府県別パネルデータを用いた金融政策のクレジット・チャンネルに関する分析」を行った。具体的には、日本における都道府県別のパネルデータを利用し、銀行部門の自己資本比率の変動が貸出供給を通じて景気循環に影響を与えたのかを検証した。日本における地域間の差異はかなり大きいため、各都道府県の詳細な情報を用いた本分析は、日本経済の本当の姿を知るうえで極めて重要であると考えられる。上記の問いに答えるため、本分析では、Driscoll(2004,JME)による構造マクロ経済モデルに銀行部門の自己資本比率を組み入れ、二段階の操作変数推定を行った。その結果、一段階目の推定においては、バブル崩壊以降の時期では、前期の自己資本比率が上昇し、今期と前期の預金が予期せずに増えた場合、今期の貸出が有意に増加することを確認できた。そして、二段階目の推定においては、このことによる今期の貸出の増加は、同じ期の生産量を有意に押し上げていたことが明らかになった。これらの実証結果は、バブル崩壊以降、仮に大幅な金融緩和政策により信用創造を通じて貨幣(預金)が増加したことがあったとしても、そのことが景気に与える正の効果は、自己資本比率の下落によって打ち消された可能性を示唆するものであり、大変興味深いものと言える。 以上の研究成果は、2006年度日本金融学会秋期大会において報告されている。また、同研究成果を基にした論文は、KIER Discussion Paper Series(No.0604,2007Feb)において発表されている。 なお、銀行貸出市場における供給側(銀行側)、及び需要側(企業側)の分析については、平成18年度においては、次年度以降における本格的な分析のための準備作業(関連する財務データの購入等)を行った。
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