研究概要 |
平成19年度においては、主に「銀行貸出市場における需要側(非上場企業)の分析」を行った。具体的には、比較的小規模な企業が多く含まれていると考えられる非上場企業(有価証券報告書提出会社)のパネルデータを用いて、90年代に日本企業が抱えていた過剰債務が銀行に対する借入需要に対して負の影響を与えていたか否かを、売上の低迷等の他要因をコントロールした上で検証した。日本における銀行貸出の伸び率は、90年に入ると1%から3%の範囲にまで急減し、97年以降においてはマイナスに転じるまでになっている。このような問題意識に基づき、銀行側、つまり資金の供給サイドを分析した研究は数多くなされてきたが、もう一方の企業側(需要サイド)を分析した研究は極めて少なく、もしあったとしても、それらは大企業が多く含まれる上場企業のデータを使用しているものがほとんどであった。言うまでもなく、資金調達を銀行借入に依存せざるを得ない企業の多くは、資金を社債等で直接調達できないような小規模な企業であると考えられるから、非上場企業(有価証券報告書提出会社)のパネルデータを使用している本研究は極めて貴重である。借入需要関数を誤差修正型として定式化し、推定を行った結果、過剰債務は概ね借入需要に対して有意に負の影響を与えていたことを確認した。本研究の実証分析によって、90年代における銀行貸出市場の低迷の原因の一つが、過剰債務を多く抱えた企業によって銀行借入が抑制されていたことであったということが、非上場企業のサンプルにおいて裏付けられた。なお、以上の研究成果を基にした論文は、KIER Discussion Paper Series (No.0708, 2008Mar)において発表されている。
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