平成19年度には、平成18年度に引き続き、他者一般に対する信頼の生成プロセスを検証するための、全国調査を行った。平成18年度調査では、全国の満20歳以上の男女とし、各市町の住民基本台帳より、層化二段無作為抽出法を用いて2000サンプルを抽出し、66.3%の回収を得た。このデータを用いた分析により、一般的信頼の高低は、制度への信頼により大きく規定されていること、また制度への信頼は、格差感により強く影響されていることが明らかにされた。平成19年度には、電子住宅地図を用いた層化3段無作為抽出法を用いて全国調査を行った。社会調査を取り巻く環境の変化により、住民基本台帳等を用いたサンプリングが年々困難になっており、今後の調査の展開を見据えて、サンプリング方法の違いによるデータの偏りについて検討することも目的の一つとした。19年度調査に関しては、現在データ分析の途中ではあるが、18年度調査の結論と一貫した結果が得られている。2つの調査のデータは、今後国勢調査のメッシュ統計とマッチングした上で、個々人の社会経済的背景だけでなく、所得の地域間をも考慮に入れた上で、信頼の生成プロセスの総合的な検証に用いられる。また、平成19年度には、上記全国調査と平行して、特定の地域内における信頼と社会的ネットワークの連関構造を分析するために、兵庫県有馬町において留め置き調査を行った。その結果、強い社会的ネットワークが信頼を高めるというこれまでの知見と一貫する結果が得られたが、社会関係資本の構成要素のひとつである互酬性の規範と信頼との間には相関関係がみられなかった。
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