認知症患者家族46名(配偶者26名、子および子の配偶者20名)を対象に、個別面接調査および集団による家族会、患者会における聞き取り調査を行った。その結果、全体のニーズとして、(1)日常時の支援と(2)緊急時の支援、の2種類に大別された。 まず日常時の支援としては、続柄および各個人のもっているソーシャルネットワークによってサポートニーズは異なることが分かった。具体的には、子どものいない、あるいはいても遠方であるか介護に対して非協力的であるといった老夫婦世帯に対しては、配偶者の施設入居による孤独感やサービス利用自体に対する抵抗感を感じやすいため、サービス利用をすすめるにあたっては慎重な対応が求められるだろう。一方、子どもなどの協力を得やすい老夫婦の場合、積極的なサービス利用に対する抵抗感が少ない場合が多いこと、さらに、家族のもっているコーピングスキルの違いも考慮する必要があることが示唆された。 緊急時の支援としては、患者の問題行動の中でも特に暴力や攻撃性を伴う行動が発生した場合、精神科救急や精神科医の往診が可能な病院といった道具的サポート源と、それらについての情報的サポート源が求められていることが示唆された。 さらに、これらニーズヘの影響要因として、ケアマネージャーなど、公的支援スタッフとの関係性やスタッフのもつ情報量、また利用施設のケアの質もこれら支援への影響要因として大きな要因であることが窺えた。 これらの質的研究結果を仮説として、今後量的調査による実証的研究を行うことで、心理教育介入プログラムヘの礎となることが望まれる。
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