認知症患者および主家族介護者を対象に、昨年度にひきつづき、個別介入およびグループ介入を行った。両群間の効果査定に関する差異を検討した結果、現段階では有意でないことが示された。このことから、患者家族同士の感情共有による効果が顕著になっていない可能性が考えられた。対象者の背景などの特性によって、両介入方法のいずれが適当であるかを考慮したうえで、介入されなければならないことの重要性が示されたといえよう。 またグループ介入における効果を、どのように増大させていくかについて、今後考慮していく必要のある要因が示された。たとえば、対象者の患者からみた続柄によって、介護負担の種類や患者との関係性の質が異なるため、介護生活上のストレス評価の種類も異なる可能性が示唆された。現在のグループ介入においては、対象者の背景について特に統一されていないが、たとえば親を介護している者と配偶者を介護している者では、共有できない部分も多く、集団の凝集性が増大しにくい一因になっているのではないだろうか。一方で、男女でも差異は存在するが、男性にとって女性からの評価を受ける場面も多く、また男性同士における感情共有のためのコミュニケーションスキルが女性に比して得意ではないことから、性別については、むしろ混在することによる意義があるのではないかと考えられる。 心理教育介入に関しては、これまで具体的な介入方法による違いはあまり検討されてきていない。今後は、家族だけでなく患者もふくめ、グループ介入を効率的に継続していくために、様々な観点から分析を重ねる必要があると思われる。
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