平成19年度のおもな研究活動としては、前年度に実施を取りやめた国外調査を行い、モスクワ市のいくつかの歴史文書館および公共図書館にて資料の追加収集を行った。特に重点を置いたのは、1949年の「反愛国的コスモポリタニズム批判キャンペーン」と密に関連するソ連文学界の内情に関する情報の収集であり、ロシア国立文学・芸術文書館の所蔵資料のほか、国内で入手困難な定期刊行物や当事者の回想録を閲覧した。 また、研究成果の発表として、二度の学会・研究会報告を行った。 まず、北海道大学スラブ研究センター2007年度夏期国際シンポジウムの枠内で行われた第4回次世代ワークショップの第二セッション"Knowledge and Values in Russian History"にて、スターリン晩年のソ連の人事政策におけるユダヤ人の取り扱いに関する英語報告を行った。内容は従来の学会通念に修正・補足を加えるものであり、それを英語圏の研究者を前に報告したことには一定の意義があったと考える。 つぎに、2007年11月10日に開催されたロシア史研究会年次大会(於早稲田大学)では、共通論題「第二次他世界大戦とホロコースト」の共同報告者として、「戦時下ソ連における対ユダヤ人政策の両義性:ユダヤ人と非ユダヤ人の意識の断層と、ソ連指導部の対応」と題する報告を行なった。この共同報告では、ドイツ研究者やウクライナ研究者による報告も行われ、歴史事象の多角的理解を深めることができた。報告は、加筆修正を行なったあと、学会誌への投稿を予定している。
|