マウス胚における血管形成過程を細胞レベルで解析するために、タイムラプス解析を行った。血管内皮前駆細胞の発生と細胞移動を可視化するために、Flk1遺伝子座に蛍光タンパクEGFP遺伝子をノックインした胚のFlk1-EGFP陽性細胞をspinning disk confocal microscopeを用いて撮影し、得た画像をdeconvolution softwareで処理して画像の鮮明化を図った。タイムラプス解析には、子宮から採取した胚あるいは胚由来組織片を倒立顕微鏡のステージ上で静置培養して、正常発生させながら観察することが必要である。マウス全胚静置培養の条件検討のため、50%DMEM/50%ラットIC血清を基礎培地として通常のCO_2インキュベーター内でテストを行い、胎生7.75日目から16時間の胚発生を行わせることができた。同様の条件で胎生8.5日目胚の静置培養も、短時間ではあるが正常に近い発生を再現できた。胎生8.5日目胚においては、卵黄嚢のみを除いた全胚培養に加えて、深部にある血管を組織表面に露出させるために胚を矢状断あるいは横断して組織培養を試みた。矢状断した組織は培養中に成長が見られず退縮した。一方、横断した組織は培養後も一定の大きさを保ち、16時間の培養後でもFlk1-EGFPの発現が認められた。そこで、胎生8.75日目のFlk1-EGFPマウス全胚あるいは横断片を倒立顕微鏡のステージ上に設置したチャンバー内で培養し、EGFP陽性血管内皮前駆細胞の観察に取り組んだ。しかしながら、この条件ではCO_2インキュベーター内でテストしたものと比べて器官発生の進行が傷害されていた。水銀ランプ光による組織障害や微妙な培養条件のブレなどが原因となっている可能性が高く、現在さらなる条件検討を行っている。
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