マウス胚における血管形成過程を細胞レベルで解析するために、解析を行ってきた。体節に由来する細胞の系譜を検証するために、体節特異的にCreリコンビナーゼ遺伝子を発現するMoxl-Creマウスと、Cre-loxPシステムに依存してlacZレポーターを発現するRosa-floxed-lacZマウスを掛け合わせて得られる胚を解析した。血管内皮細胞マーカーとの共染色を行ったところ、心大血管流出路を形成する血管内皮細胞の一部がlacZ陽性であることが分かった。さらに、背側大動脈周囲の平滑筋細胞の多くもlacZ陽性であったが、背側大動脈・神経周囲血管叢・肢芽の内皮細胞にはlacZは検出できなかった。このことから、体節に由来する内皮細胞は低頻度にしか存在しないことが示唆された。同時にMoxl-CreマウスとFlklコンディショナル・ノックアウトマウスを掛け合わせて、血管内皮細胞の分化に必須の分子Flklを体節特異的に欠損させ、血管構築における役割を解析することを行った。血管内皮細胞への寄与が少ない結果と一致して、解析したコンディショナルノックアウトマウスにおいて、血管構造の明らかな異常は検出できなかった。また昨年度より、体節内に血管内皮前駆細胞が発生し高次血管構築に寄与する過程を観察するために、Flkl-EGFPマウス胚を用いてタイムラプス解析を試みてきた。明視野タイムラプス撮影は可能であったものの、水銀ランプ光を当てると器官発生の進行が傷害されていた。マウス胚組織を長時間培養しながら、水銀ランプ光源下でFlkl-EGFP陽性の血管内皮前駆細胞を観察するためには、さらなる条件検討が必要である。
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