研究概要 |
【はじめに】手術支援ロボット(da Vinci surgical system)は,3次元的な空間の把握が可能であり,従来の腹腔鏡手術の問題点の1つであった手術野の立体的な認識を可能にしている.また,実際に手術を施行するアームが7自由度を有し,様々な方向からの病変へのアプローチが可能である.そのため,外科医が意図する手技をより忠実に再現可能であり,習熟に訓練を要した腹腔内での縫合などの手技が簡便に施行可能である.欧米では様々な術式でロボットを使用した報告が見られるが,腹腔鏡下胃内手術にロボットを使用した報告はない.今回我々は,ブタの臓器を使用した独自の胃内手術モデルを作成し,ロボットを使用した胃内手術の有用性に関して検討を行った. 【対象および方法】Turbingen Trainerに食道断端より送気用のチューブを挿入、固定したブタの胃を固定した.十二指腸側断端は縫合閉鎖し、食道より挿入したチューブより室内空気を注入し胃内手術モデルを作成した.このモデルを使用し,腹腔鏡下胃内手術に準じて手術支援ロボット(da Vinci surgical system)を使用し,2例で仮想病変を含めた胃の粘膜切除を行った.また,胃粘膜切除後の欠損部の閉鎖および意図的に作成した胃穿孔の縫合も行った. 【結果】施行した2例ともに一括切除が可能であった。摘出胃粘膜の大きさは平均約6cmで、手術時間は約12分間であった。また、胃穿孔部の縫合および胃粘膜切除後の粘膜欠損部の閉鎖ともに特に問題なく簡便に施行可能であった 【考察】手術支援ロボットを使用することで,胃内病変の粘膜切除や,穿孔部位の縫合手技が簡便かつ安全に施行可能であることを世界で初めて検証した.
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