花崗岩が分布している地域において、豪雨時や台風シーズンには、多くの土砂災害が発生している。スメクタイトは地球表層では普遍的に認められる粘土鉱物であり、花崗岩分布地域では、粘土細脈中や風化土(マサ)中に産する。吸水すると膨張するといった特性があるために、スメクタイトは土砂災害の素因のひとつとして挙げられるが、土砂災害発生箇所に産出するスメクタイトの鉱物学的研究は少ない。本研究では、地すべりとスメクタイトの特徴との関係を明らかにすることを目的とし、花崗岩分布地域を対象として研究を行った。過去に土砂災害が発生した箇所(発生箇所)および土砂災害の発生履歴のない箇所(非発生箇所)に分布する粘土細脈中から試料を採取し、鉱物同定を行うために粉末X線回折を用いた。土砂災害発生箇所においては、スメクタイトのみからなる試料は認められず、雲母粘土鉱物・カオリン鉱物のいずれかが共生している。一方、非発生箇所では純粋なスメクタイトから成り、他の粘土鉱物は含まれていない。しかし、いずれの脈中においてもスメクタイトのd(060)値は1.49-1.50であり、2八面体型スメクタイトと判別できる。電子顕微鏡を用いた観察では、土砂災害発生箇所と非発生箇所において形態に違いが認められた。発生箇所に産するスメクタイトは、非発生箇所に産するスメクタイトに比べて粒径が大きく、形態はより輪郭のはっきりとした不定形板状を呈する粒子が多い。共生鉱物の有無からも示唆されるように、同じ2八面体型スメクタイトであるにも関わらず発生箇所と非発生箇所においてスメクタイトの鉱物学的特徴が異なっていることから、スメクタイトの成因が土砂災害に関係している可能性があることを示唆している。これらの結果の一部をEuroclay(2007)にて発表する予定である。
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