研究課題/領域番号 |
18H00608
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
大谷 卓史 吉備国際大学, アニメーション文化学部, 准教授 (50389003)
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研究分担者 |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
久木田 水生 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10648869)
西條 玲奈 京都大学, 文学研究科, 教務補佐員 (10768500) [辞退]
神崎 宣次 南山大学, 国際教養学部, 教授 (50422910)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 研究倫理 / 情報倫理 / 科学技術倫理 / デュアルユース技術 / 科学技術の価値 / 技術哲学 / 技術史 / 科学のエトスと軍事研究 |
研究実績の概要 |
インターネット研究倫理に関する基礎的調査研究を進めるとともに、研究倫理に関するシンポジウムを開催した。 1)基礎的調査研究として、科研費応募前から進めた米国大学のインターネット研究倫理にかかわるガイドラインに加え、学協会および規制機関のインターネット研究倫理にかかわるガイドラインや文書等の翻訳を進めた。Association of Internet Researchersおよびカナダおよびノルウェーの規制機関等のガイドラインの翻訳を進めた。 2)2019年電子情報通信学会総合大会(早稲田大学、2019年3月20日)で、同学会技術と社会・倫理研究会および科研費挑戦的研究(萌芽)「軍事研究を哲学する:デュアルユースの観点から」との共同で、「軍事研究と科学技術者コミュニティ:デュアルユース技術と科学技術の価値」を開催。哲学・倫理学(技術の哲学、情報哲学、情報倫理学、戦争倫理学)、国際関係論、科学技術社会論、安全保障学の専門家を招聘し、科学技術者コミュニティ(学会・協会)は軍事研究をどのように扱うべきか総合的観点から議論した。①一般的に、軍事研究は科学の公有主義の観点から、その成果の秘密主義が批判される一方で、学会等で「軍事研究」と定義される研究の発表機会が奪われることも公有主義に反する可能性があること(憲法の保障する学問の自由との対立の可能性も)、②そもそも「軍事研究」の定義が曖昧であり、定義によっては戦争を防止する/戦争の悲惨さを制限する研究(例、正戦論や外交的安全保障研究)も軍事研究とみなされる可能性があること、③日本学術会議の関連答申では学協会・大学に軍事研究制限のガイドラインや基準設定が任されている現状の困難、④技術には価値が埋め込まれているとみる現代の技術哲学の観点から見てデュアルユース技術は利用制限のみでよいかなどの、重要論点の指摘が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者が、学習困難を抱える学生の卒業論文指導や不登校者への対応(前期5月から不登校開始、体調不良等の訴えで通院補助等も実施、9月末退学)などのため、十分に研究時間を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)今年度は、継続してきた基礎的調査研究の成果の一部、および国内で起こったインターネット研究倫理にかかわる紛争に関する研究を発表する。5月現在の予定では、下記の2点の発表が決まっている。①国内学会で起きた「創作系」と言われるソーシャルメディアで起きたユーザーコミュニティと研究者との摩擦事例に関する考察を、分担研究者が6月の研究公正会議で発表する。②ガイドラインや関連文書の翻訳をもとに、既存のインターネット研究倫理の共通点や特徴等をまとめ、7月には発表する予定。 2)日本国外のインターネット研究倫理に対する対応状況に関して、IRBの倫理審査ガイドラインやその他の関連文書で調査を継続する。これは、インターネット調査と翻訳を主に実施する。必要に応じて、電子メールやメッセージングアプリなどを活用し、規制担当者等への聞き取り調査を実施する。 3)インターネットで公開されている日本国内の大学・研究機関のIRBの倫理審査ガイドラインや関連書類を調査し、インターネット研究倫理ガイドラインで注意・指摘されている要素に関する審査規定や配慮事項が定められているか検討する。 4)上記の2)と3)と並行して、個別研究者やIRB構成員等の体面による聞き取り調査を実施する。聞き取り調査対象の選定にあたっては、インターネット研究倫理に関する審査実績があるIRBや、インターネット研究を実施している研究者を中心とする。 5)学術雑誌(とくに、心理学、社会学、社会心理学、工学(HCIなどヒトを対象とする研究)等)におけるインターネット研究倫理の取り扱いに関しても、インターネット上に公開されている資料を中心として調査を実施する。必要に応じて、担当者への聞き取り調査を実施する。
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