研究課題/領域番号 |
18H00611
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吾妻 重二 関西大学, 文学部, 教授 (20192982)
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研究分担者 |
有馬 卓也 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (10232068)
橋本 昭典 奈良教育大学, 国語教育講座, 教授 (20379522)
太田 剛 四国大学, 文学部, 教授 (30461362)
陶 徳民 関西大学, 文学部, 教授 (40288791)
長谷部 剛 関西大学, 文学部, 教授 (50308152)
松井 真希子 奈良工業高等専門学校, 一般教科, 講師 (70756436)
中谷 伸生 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90247891)
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
山寺 美紀子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90601097)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 泊園文庫 / 藤澤東ガイ〔田+亥〕 / 藤澤南岳 / 石濱純太郎 / 漢学 / 私塾 / 儒教 / 徂徠学 |
研究実績の概要 |
3年目である2020年度は計画に沿って調査・研究を行うとともに、サイト「WEB泊園」をリニューアルした。また泊園書院第二代院主・藤澤南岳の没後百年にあたるところから「南岳百年祭」記念行事を開催した。具体的には次のとおり。 (1)漢学の分野では、吾妻が南岳の交遊関係や書画、儒教史につき研究し、有馬が泊園門人の岡本韋庵に関して考察を進めた。橋本は清末の学者で近代日本にも影響を与えた皮錫瑞につき論じるとともに中国思想史全般を考察した。 (2)漢詩・書画・芸術の分野では、長谷部が明治時代を含む漢詩史について検討を加え、太田は泊園門人で真言宗高僧として活躍した谷内清巌の書や、藤澤東ガイ〔田+亥〕・南岳と交遊のあった四国の文人につき研究した。中谷は泊園書院をとりまく大阪画壇を中心に十時梅厓らの芸術につき論じた。山寺は泊園書院とその学統たる荻生徂徠の琴学を考察するとともに、その琴歌を再現した。碑文については松井が墓碑文の訳注を作成した。 (3)近代アジア学との関係については陶が内藤湖南を中心に日本の近代中国学を考察した。 (4)アーカイブ関係では外部委託により南岳・黄坡『論語彙纂通解』(和文)、南岳『萬国通議』(漢文)をデータ入力した。さらにKU-ORCAS(関西大学アジア・オープン・リサーチセンター)の協力により、5月に泊園文庫印章デジタルアーカイブを改修、7月には「WEB泊園」を全面リニューアルし新コンテンツを多く追加した。また、アルバイト雇用により泊園門人の資料を多数収集するとともに「南岳日記」(漢文)の句読作業を進めた。 (5)「南岳百年祭」として記念シンポジウムを10月23日・24日の両日、関西大学で開催した。コロナ禍のためオンライン併用とし、関係者の支持、協力によって盛会裏に終了した。また企画展「藤澤南岳の書と芸術」を10月から11月にかけて開催し、その展観目録をカラーで作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの3年間、研究は順調に推移し、成果を蓄積している。研究代表者・分担者が各テーマのもとに専門的調査・研究を進め、「研究発表」欄に示すとおり成果が着実にあがっている。 2020年度の行事としては10月に開催した「南岳百年祭」が重要である。この行事は学校法人関西大学およびKU-ORCASの支援を受けつつ、本科研メンバーを含む10名が講演や研究発表等を行い内外に発信したもので、泊園書院研究における大きなエポックとなった。企画展「藤澤南岳の書と芸術」(関西大学総合図書館展示室)も、コロナ禍にもかかわらず多くの入場者があった。この「南岳百年祭」における研究発表は今年度、論文集として刊行予定である。東ガイ〔田+亥〕・南岳の出身地である香川県では、これに呼応していくつかの関連行事が催されたこともつけ加えておく。 アーカイブに関しては「WEB泊園」を一新させ、これまでの成果をコンテンツとして盛り込んだ。私塾・藩校のサイトとしては日本で最も充実したものの一つとなったと思われる。泊園書院に関する研究文献についても、2009年以前と2010年以降に分けて詳細なビブリオグラフィーを当サイトで公開した。 電子データについては南岳たち歴代院主の主要著作を引き続き文字入力している。「南岳日記」も大学院生のアルバイトにより、漢文の句読作業を進めているところである。泊園書院門人の略伝執筆も進展しており、「南岳百年祭」の際には『泊園書院の人びと――その百五十人』と題して、主な門人の略伝集を製本し関係者に配布した。今年度はこれをさらに充実させていきたい。 このように、本科研は課題とする「泊園書院」およびその「漢学」の研究を着実に推進させており、「アーカイブ構築」についても、泊園文庫の書籍および印章、門人データベース、碑文、文献資料などを集成しつつある。今年度もこれらの作業を引き続き行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は過去3年間の作業をふまえて調査・研究をまとめるとともに、文字データ・アーカイブ関連作業を充実させる。また藤澤南岳没後百年記念行事における研究発表および泊園書院門人調査の成果をそれぞれ単行本として刊行し、本科研の総括の一部とする。 (1)漢学関係:陶は懐徳堂および近代漢学に関する研究を進め、有馬は四国・中国地方における近世漢学を考察する。橋本は経学・漢学研究を進める。吾妻は泊園書院の教育制度や学術、ネットワークにつき考察する。 (2)漢詩・書画・芸術関係:長谷部は幕末・明治期の漢詩および詩社を研究し、太田は四国における東ガイ〔田+亥〕・南岳らの漢詩文と書画を調査する。山寺は泊園書院における琴学と音楽をめぐって研究を継続する。(3)門人関係:横山は泊園書院門人の調査を進め、その略伝を執筆する。(4)碑文関係:関連碑文については松井が訳注作業を継続する。 (5)アーカイブ関係1: a) 藤澤南岳のぼう大な日記「南岳日記」(漢文、全57冊、明治8年4月~大正9年1月)の文字データに句読点を付し、その画像とあわせて公開の準備を進める。b) 門人録および成績表の入力済データを整理する。c) 東ガイ〔田+亥〕・南岳・黄鵠・黄坡の著作の入力済文字データを整理する。 (6)アーカイブ関係2: a) 泊園文庫書籍の撮影を継続する(アルバイト雇用)。b)「WEB泊園」リニューアルに伴い、諸データ・画像・記事等のコンテンツをいっそう充実させる。泊園書院研究に関するビブリオグラフィーも追加する。 (7)書籍の刊行:a) 2020年10月、関西大学の支援により開催した藤澤南岳没後百年記念行事「南岳百年祭」における研究発表を『南岳百年祭 記念論文集』(仮題、吾妻編著)として関西大学出版部から刊行する。b) 600人にのぼる泊園門人の略伝集『泊園書院の人びと』(仮題、横山執筆、吾妻監修)を刊行する。
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