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2019 年度 実績報告書

グローバル・ガバナンスにおける「ゆらぎ」と秩序形成ー自己組織性の論理を探る

研究課題

研究課題/領域番号 18H00824
研究機関名古屋大学

研究代表者

山田 高敬  名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00247602)

研究分担者 山田 哲也  南山大学, 総合政策学部, 教授 (00367640)
塚田 鉄也  桃山学院大学, 法学部, 准教授 (00551483)
赤星 聖  関西学院大学, 法学部, 准教授 (20795380)
西谷 真規子  神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (30302657)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードグローバル・ガバナンス / 国際制度 / 自己組織的システム
研究実績の概要

19年度は、前年度構築された分析枠組みを使い、各分野の「ゆらぎ」について、より詳しい分析を実施した。具体的には、「企業と人権」に関しては、人権NGOのネットワークが企業による自主的な取り組みを重視する現行の国際制度に不満を表明し、新たなガバナンス制度の構築を求め、一部の国がこれに共鳴し、人権リスク管理の義務化を通して、この「ゆらぎ」を増幅したことが確認された。また腐敗防止に関しては、「司法の廉潔性」を求めるアクター(国連薬物犯罪事務所やトランスペアレンシー・インターナショナルなど)による「ゆらぎ」の増幅が同様に確認された。捕鯨に関しても、調査捕鯨の合法性をめぐる審理において国際司法裁判所が規範の変化を促進する「ゆらぎ」の推進力となったことがわかった。同様に、EUの第三国国民による家族呼び寄せに関する政策においても、EUおよび各国の司法機関によって政策変化を促す方向に「ゆらぎ」が増幅されたこと、また難民保護に関しても、国連難民高等弁務官事務所およびその地域事務所がNGOなどと連携して既存の規範に変化をもたらす「ゆらぎ」を発生させていることがそれぞれ確認された。このように、それぞれの問題領域で「ゆらぎ」を創出し、増幅するアクターが検出され、これらのアクターの自省作用により、各分野での既存の規範体系や知識体系が問い直されることになり、国際秩序か「変態」することがある程度確認されたことは、有意義な研究実績と言えよう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者および研究分担者がそれぞれ担当する問題領域においてグローバル・ガバナンスにおける「ゆらぎ」の生成・増幅過程に関する実証分析に期待された進展が見られたからである。年度内に定期的に開催した研究会では、それぞれが実証分析の途中経過を報告して、建設的な意見交換が行われた。「企業と人権」に関しては、新型コロナの感染拡大前に対象アクターに対するインタビュー調査を実施できたため、計画通りに実証分析が実施された。捕鯨に関しては、テーマが民間航空から急遽変更となったことから、新型コロナの感染拡大の結果、英国にある国際捕鯨取締条約事務局への聞き取り調査を実施することがタイミング的にできなかった。同様に腐敗防止に関しても海外出張が制限されたことにより予定されていた情報収集が十分にできなかった。第三国国民による呼び寄せ政策および難民保護に関しては、それぞれ計画通りに事例分析が行われている。特に後者に関しては、ヨルダン・難民キャンプにおいて事業調査やインタビュー調査を予定通り実施することができた。ただ2020年3月実施予定であったニューヨークでの現地調査は、新型コロナの感染拡大のため断念せざるを得なかった。

今後の研究の推進方策

今後は、それぞれの問題領域でより詳細な分析を実施するとともに、分析対象をさらに広げ、他の事例においても同様の「ゆらぎ」作用が観測されるかどうかを確認する予定である。「人権と企業」(研究代表者担当)に関しては、ソフトローからハードローへの転換においてどの程度の進展が見られたのか、また国家レベルの「ゆらぎ」がどのようなアクターによって、どのように創出され、それがグローバルなレベルの「ゆらぎ」とどのように連動しているのかについて、インタビュー調査を実施して明らかにしたい。腐敗防止(西谷担当)に関しては、昨年度実施できなかったインタビュー調査を実施し、さらなる情報収集に努める。捕鯨に関しても昨年度実現しなかった国際捕鯨取締条約事務局へのインタビュー調査を実施し、当該条約事務局とNGOとの関係性などについて情報収集を行う。呼び寄せ政策(塚田担当)については、EUの政策過程で一定の影響力を及ぼしていると考えられるEU司法裁判所及び各国裁判所の役割について、他の分野におけるそれらのアクターの役割と比較しつつ、明らかにする。難民保護(赤星担当)に関しては、昨年度断念したニューヨークでの調査を実施するとともに、事例分析の結果を分析枠組みにフィードバックさせ、枠組みのさらなる精緻化を目指す。さらにそれぞれのテーマについて進捗状況を確認するために定期的に研究会を実施する予定である。可能であれば、海外での研究会開催も検討したい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 「日本の商業捕鯨再開とグローバル・ガバナンス」2020

    • 著者名/発表者名
      山田哲也
    • 雑誌名

      『グローバルガバナンス』

      巻: 6号 ページ: 1-12

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「セキュリタイゼーション(安全保障化)」2020

    • 著者名/発表者名
      塚田鉄也
    • 雑誌名

      現代地政学事典編集委員会編『 現代地政学事典』(丸善書店、2020年1月)

      巻: なし ページ: 568-569

  • [学会発表] Managing Reputation for Organizational Survival: Cases of Initial Involvement by the UNHCR in Issues on Internally Displaced Persons2019

    • 著者名/発表者名
      Sho Aakahoshi
    • 学会等名
      GSIR Research Training Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Where Do Public and Private Regulations Meet? A Case of Delegation in the EU’s Forest Regulation2019

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Yamada
    • 学会等名
      International Conference on Global Regulatory Governance
    • 国際学会
  • [学会・シンポジウム開催] How and why do international organizations fight against corruption?2019

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公開日: 2021-12-27  

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