研究課題/領域番号 |
18H00904
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 忠彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40400626)
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研究分担者 |
領家 美奈 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (10303348)
石垣 司 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (20469597)
伴 正隆 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (50507754)
西尾 チヅル 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80241769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 選択行動 / ベイジアンモデリング / 感性評価 / 尺度開発 / マーケティング |
研究実績の概要 |
本年度は,POSデータやID付きPOSデータの活用に加え,消費者態度のメカニズムを評価可能にするモデル構築を狙いとしたアンケートを実施し,基本的にベイジアンモデリングの枠組みによる計量的な研究を実施した. 一つ目は,前年に引き続き閾値モデルによる非線形効果の評価,消費者の構造異質性評価を実現するためのモデルの提案と実証分析を実施した.二つ目は,前年度までの研究成果を土台として,超多数の母数をもつ深層学習を用いた推薦システムのマーケティング応用に関する研究を行った.その内容は主に3つであり,(i)eコマースの商品購買履歴を用いた異なる商品カテゴリ間の情報を融合した推薦システムの構築,(ii)映画配信サイトの視聴履歴データを用いた推薦配分の新規性を考慮した効率的アルゴリズムの提案,(iii)顧客属性・購買履歴データと商品の特性データの深層学習での融合による高度な情報推薦である.3つ目は,「消費者の感性がその選択行動に与える影響」および「消費者の個人差」を検証するデータ収集として,大規模ウェブ調査を行い,階層ベイズ回帰モデルによる評価構造の分析を深化させるモデルの構築を行った.4つ目は,消費者の行動メカニズムの態度による影響を評価可能にするために,宿泊施設におけるおもてなしサービスの測定尺度の開発を行った.本研究では,おもてなしの定義や構成概念を整理するとともに,おもてなしサービスの代表といえる宿泊サービスを対象とし、おもてなしの構成要素の特定化と測定尺度の開発を行い,宿泊サービス事業者向けのアンケート調査を実施し,信頼性,収束妥当性,弁別妥当性等を充足した測定尺度を導出した。 いずれの成果も,本研究の課題の主たる目的である,消費者の選択行動の解明に資する成果となっており,研究は順調に進展しているものと判断している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果として,学術論文8件(海外誌3件,全て査読付き),学会発表等9件(国際学会6件,招待講演1件)を実施している.また,来年度に向けた研究の方針も本年度の成果を踏まえて構築できている.そのため,本研究プロジェクトはおおむね順調に進められていると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では一貫してベイジアンモデリング技術を採用する.STEP0では,消費者選択行動原理に関する理論的な再検証を進める.STEP1は,多数の研究事例がある一変量の選択モデルの再検討を進める.第1フェーズでは,特に「限定合理的選択行動」や「後悔最小化原理」等の仮定の下でのモデル開発を進める.第2フェーズでは,第1フェーズの知見を前提とし,「動的選択行動のモデル化」へも踏み込む.第3フェーズは,小規模態度データ(アンケートにより取得)と大規模行動データ(小売,WEB)を用いて第1フェーズと第2フェーズで構築したモデルを実証し,選択行動理論へのフィードバックを試みる.STEP2では,マーケティング・サイエンス領域で研究が少ない(超)多変量型選択モデルを検討する.本STEPで検討を進める事項には「超高次元の分散-共分散の推定」「超多数のパラメータの推定アルゴリズム」といった技術的な側面の困難が存在し,統計技術を格段に進展させない限り,消費者の選択行動理解につなげられない.第1フェーズでは,「高次元分散共分散行列のモデル化」「(超)多変量多項選択現象のモデル化」を中心に研究を進める.第2フェーズでは,第1フェーズの知見を踏まえ,「動的高次元分散共分散行列のモデル化」「動的(超)多変量選択行動のモデル化」「ビッグデータ対応型推定アルゴリズム」を開発する.第3フェーズでは,大規模行動データ(小売,WEB)を用いて本STEPで構築したモデルを実証し,選択行動理論へのフィードバックを試みる.本年度は,STEP1のモデル開発と実証分析を継続的に進めるとともに,STEP2のモデル開発で生じた分散共分散行列の次元の呪いに対応した数理的な部分に対する解決策の構築を進める.また,消費者の非合理的な行動に対する態度ベースの理論構築も進める.
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