研究課題/領域番号 |
18H00905
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 剛 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (70323912)
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研究分担者 |
鈴木 智子 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (20621759)
EDMAN Jesper 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (20615976)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語 / 市場創造 / 制度理論 / 文化社会学 / 消費文化理論 / 制度 |
研究実績の概要 |
市場創造において言語が果たす役割について制度主義的観点から検討することを目指す本研究の成果は4つに分けられる。 第1に、言語を通じた市場創造について、さらなる文献研究および理論的検討を進めた。本研究のポジショニングを明確にするために、特に文化社会学、認知社会学、制度理論、消費文化理論における理論的展開と、それらの関係性についての検討を深めた。 第2に、言語を通じた市場創造の国内事例として、「雑貨」についての調査をさらに深耕した。「雑貨」は、通常の製品カテゴリーとは異なり、「雑貨」という定義不可能な言葉によって仕切られている日本独自のカテゴリーである。このカテゴリーを創造する上で中心的な役割を果たした文化屋雑貨店店主を中心として長時間に渡るインタビューおよびフィールドワークを行った。その成果をとして、Association for Consumer Research(ACR)にビデオグラフィー「Zakka: The Uncategorized Culture of Uncategorized Goods - An Oral History of an Uncategorized Man」を投稿し、令和元年10月に開催されたACRの年次大会で発表した。ビデオグラフィーとは、ACRでは長年の伝統を持つ動画による学会発表形態である。 第3に、言語を通じた市場創造の国内事例として、ハロウィンという舶来の民間行事が日本社会に定着する過程を分析した。その成果として、松井剛編・一橋大学商学部松井ゼミ15期生著(2019)『ジャパニーズハロウィンの謎:若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?』 (星海社)を令和元年9月に出版した。 第4に、言語を通じた市場創造の海外事例として執筆した日本食に関する論文の査読結果に対する対応を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の「研究実績の概要」の4点それぞれについて、以下のような理由から、総合的に「おおむね順調に進展している」と考える。 第1に、言語を通じた市場創造について文献研究および理論的検討は順調に進展しており、その内容は、以下の研究成果や現在に至るまで続けている研究において活用されている。 第2に、ACRで発表したビデオグラフィーは、日本の大学研究者としては初めてBest First-Time Videography Awardを受賞し、国際的に高い評価を受けた。 第3に、ハロウィンに関する研究の成果『ジャパニーズハロウィンの謎:若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?』 は、新聞、雑誌、テレビなどのメディアから取材を受けるなど、社会的に高い評価を得た。 第4に、言語を通じた市場創造の海外事例として執筆した日本食に関する論文の改定稿は、残念ながらリジェクトされたが、その後、別の国際ジャーナルへの投稿のための準備が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
言語を通じた市場創造の国際事例として、研究代表者を中心に、日本食のアメリカ社会への定着についての研究を精力的に進める予定である。研究代表者は、令和4年2月よりニューヨーク大学社会学部の客員研究員として在外研究に従事している。その主要な目的は、本科研費の研究プロジェクトをすすめることにある。 日本食のアメリカ社会での定着過程においては、「hibachi」「umami」、「omakase」といった新しい概念が広まり、それが日本食のマーケティングにおいて活用されてきた歴史的な経緯がある。先行研究の検討の結果、他の外国料理(ethnic cuisine)、例えば中国料理のアメリカ社会での定着については分厚い研究の蓄積があるものの、日本食の定着については、非常に研究が乏しい。また、外国料理というカテゴリーが言語的に定着し、普及するというプロセスに関する研究は、社会学やマーケティング領域において、十分進められているとは言い難い。 本科研費では、このリサーチギャップを埋めるために現地調査を進める。同時に、理論的な発展のための検討も同時に進める。
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