研究課題/領域番号 |
18H00906
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 聰 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (40235643)
|
研究分担者 |
赤松 直樹 明治学院大学, 経済学部, 講師 (40758801)
齊藤 嘉一 明治学院大学, 経済学部, 教授 (50328671)
寺本 高 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (60609915)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 情報循環 / アイカメラ / 実験 / クチコミ / 店頭 |
研究実績の概要 |
昨年度、ネット上での情報の伝達について調査・分析を行ったので、今年度は実際の店頭での売り方(プロモーション)がどのように情報循環に役立つのかを、実際の商品と実際のスーパーマーケットの棚を実験室に作り、アイカメラを用いて実験した。今までの店頭のプロモーションは、売上には効果があるが、そこからクチコミには広がらないとされていたので、それが本当かどうかを確かめるのがその目的である。実験には、実際の調味料食品を用い、その商品のライン拡張品を何種類配置するのが適切なのか、またどれだけの時間、店頭を眺めているのか、店頭にアプローチするまでの時間での視線の動きはどうなのか、そしてその結果、投稿に結びつくのかを確かめた。 それによると、店頭での商品数を2,3,4,6,12の5つの状態を作成したが、6商品の時が最も消費者の目の動きが活発で、実際の情報処理も活発に行われていること、商品についての投稿でも、この時が最も写真を投稿しやすいことが明らかになった。消費者の情報処理は、店頭にアプローチする間に行われ、店頭に実際立った際には、既に自分が興味のある商品数種類だけに注目し、全体を見ることがないことも明らかにされた。 実際の購買との関係では、自分が普段から購入している商品を買う傾向があり、とくに商品数を4から12まで変化させても、あまり変化はなかったが、6商品の時にスムーズな購買が行われた。予算制約を入れると、特にそれが顕著になった。また商品数が多すぎる場合は、その売場に対する嫌悪感が増し、その理由は適切な数でないと、消費者が上手く情報処理できないことが、視線の動きから判明した。 この結果、商品を売る際の店頭は適切な数があること、店頭プロモーションも、情報を共有する、情報循環行動に影響することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報循環型の意思決定プロセスの有効性を示すために、初年度はネットでの商品のクチコミと購入の関係を探り、2年目は、店頭での購買とクチコミの関係を探った。その結果、ネットでのクチコミは、クチコミの伝達だけにとどまらず、購買にも影響すること、また店頭でのプロモーションは、従来の研究成果である購買だけではなく、適切な数の店頭を作れば、投稿にも結び付くことがわかり、情報が循環する方法として、ネットだけではなく店頭も有効であること、そしてネットでのクチコミは、端に情報伝達だけではなく購買に影響することが明らかになった。 このことは、情報循環における購買の場(店頭)、購買後(クチコミ)が連携しており、情報循環型意思決定プロセスで仮定したことが、実際に行われていることを示す結果になり、この意思決定プロセスの有効性を示すことになった。当科研費の目的である、理論の一般化に一歩近づいたことになる。但し、より普遍的な理論に高めていくには、日本だけではなく、他国でも確かめていく必要がある。最終年度は海外でもこの2年間の研究を融合した形での実験・調査を行えば、当初の目的を達成できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年最終年度は、海外での調査を通じて、平成30年度、令和1年度で確かめられたことを確かめ、一般化する方向に進める。海外調査は、平成30年度に用いた商材が現地でも販売されているシンガポールで行うことを検討しており、シンガポール国立大学のLeonard Lee教授に研究の手助けをしてもらうこと、既に了解を得ている。また実際の調査実験を実行するにあたり、日本の調査会社インテージ社から調査協力を得られることも確認しており、現地でのオペレーションもできる体制になっている。 但し、COVID-19の関係で、海外での調査・実験ができるかどうかは微妙な情勢である。このため、本年最終年度の前半は、平成30年度、令和1年度の調査を学会発表、ならびに論文としてまとめることに注力し、問題点を洗いだし、本年最終年度の後半に、現地で調査・実験を行うことにした。学会発表は、平成30年度の調査を報告する6月のINFORMSは採択されたが中止、令和1年度の調査を報告する予定の10月のACRは採否待ちの状況である。 海外での実験が出来ない場合に備えて、日本国内からインターネットを通じてシンガポールで調査することもオプションとして考えている。この際は、対象者に実際に店で商品を購入してもらい、それについてネット上で広めてもらうことで、実際の購買がどのように動くのかを観察する実験になる。店頭の実験は不可能になるが、平成30年度に行ったネットでの拡散状況は、日本国内からの調査でも十分可能であり、それにより、日本国内での調査と比較可能になる。来年度以降、その調査結果を合わせて海外で報告することができれば、情報循環理論について、一般化への道は開かれると考えている。
|