研究課題/領域番号 |
18H00910
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 淳蔵 神戸大学, 経営学研究科, 名誉教授 (50093498)
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研究分担者 |
柏木 千春 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (50454749)
栗木 契 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90294397)
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
畢 滔滔 立正大学, 経営学部, 教授 (70331585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マーケティング / 観光 / DMO |
研究実績の概要 |
現在、日本の各地でディスティネーション・マネジメント組織(DMO)が新たに設立されている。観光振興や地方創生におけるDMOへの期待は大きいが、課題もまた少なくない。そのなかにあって本研究は、DMOの利害調整方式への地域産業構造の影響についての分析を進めることで、DMOの役割や運営方式についての新たな知見を確立することを目指している。 本研究では、地域によって異なる産業構造と、DMOの適切な役割や運営方式との関係を解明し、類型化を試みることを目指す。この目的のもとで本研究では、地域経済に占める観光産業の構成比が異なる米国の先進観光都市のDMOを取り上げ、その役割や運営方式の比較に貢献するための調査を進める。 そのもとで本研究では初年度の平成30年度には、米国ハワイ州のDMO、および関連する観光組織などを対象に、DMOのあり方を多面的に検討するための文献調査およびフィールド調査を行うとともに、DMOの生成と発展をとらえるためのベースとなるマーケティングやコミュニティのマネジメントとイノベーションについての理解を深めるための諸検討を進めた。 そしてその成果から、各種の学会報告や論文、書籍の公刊などを通じて研究成果の発表を行った。発表の主要テーマは以下である。営業をはじめとするマーケティングの実践を高度化するマネジメンのあり方/イノベーションにおけるデザイン思考の役割/観光に関わる交通需要マネジメントやカルチャーと地域コミュニティの関係/地域における人的な連携を促進するプラットフォームの展開。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、地域の異なる産業構造の下での効果的なディスティネーション・マネジメント組織(DMO)のあり方の類型化するために、地域経済に占める観光産業の構成比が異なる米国の先進観光都市のDMOを取り上げた比較事例研究を進めることである。初年度の平成30年度には文献調査およびフィールド調査を進めた。文献調査としては、DMO、および関連する観光マーケティングにかかわる調査を進めた。フィールド調査については、本研究が比較事例調査の対象として注目しているハワイのDMO、および関連する観光組織に対する調査を中心に、DMOのあり方に関する調査を進めた。合わせて平成30年度には、これらの調査の成果を踏まえ学会報告や論文、書籍の公刊などを通じて研究成果の発表を行った。 平成30年度の調査を進めるなかで、DMOに関わるステークホルダーの広がりの大きさと関係の複雑さが浮かび上がってきた。したがって本研究においては、DMOにかかわる重層的な関係を全面的に解明しようとするのではなく、研究目的を踏まえた対象の絞り込みと、そのもとでの分析の深掘りを行うことを方針とする。 加えて本研究では、研究経費が当初の申請から減額となっている。この制約を踏まえると、調査対象都市を絞り込み、そこにおけるDMOにかかわる関係を分析していくことが適切と考える。この方針の下で年度後半には、さらにもう1つの調査対象都市を選定し、現地調査を開始する。この選択にあたっては、米国における海外からの訪問者数ランキング上位都市を念頭に、地域産業構造の違いを踏まえた比較検討に適した都市を選択し、調査を行う。また日本のDMOへの示唆を導き出すには、現在の日本においてDMOが直面している問題を把握しておく必要がある。そこで国内のDMOについてもその動向を広く把握している関係者に可能な範囲でインタビューなどを行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の前半には、前年度の理論研究、および現地調査を踏まえてDMOの生成と発展のプロセスを把握するための方法上の問題を検討し、調査にあたって比較検討するべき事項や、調査の進め方の手順などの調査フレームについて必要な見直しを進める。 平成31年度の前半には、昨年度の調査を引き継ぎ、北米の1都市を対象に現地観光産業にDMOが果たす役割に関する調査と分析を進める。DMOの生成と発展におけるステークホルダーの役割分担の問題に注目しながら調査と分析を進める。 先述のように本研究の前年度の調査から、DMOに関わるステークホルダーの広がりの大きさと関係の複雑さが浮かび上がってきた。一方で研究経費が当初の申請から減額となっているなかでは、調査対象都市の絞り込みが避けがたい。そこで本研究では調査対象都市を2都市とし、重層的な関係を掘り下げて分析していく。この方針の下で年度後半には、さらにもう1つの調査対象都市を選定し、現地調査を開始する。この選択にあたっては、米国における海外からの訪問者数ランキング上位都市を念頭に、地域産業構造の違いを踏まえた比較検討に適した都市を選択する。また日本のDMOへの示唆を導き出すために、国内のDMOの動向を広く把握している関係者にインタビューなどを行う。 これらの現地DMOに関する調査にあたっては、DMO、関連企業・団体の協力を得ながら、関係者への聞き取り、二次資料の収集を進め、調査フレームを踏まえた分析を進める。そのうえで、DMOと観光をはじめとする各種産業の関わりをとらえる調査フレームの見直しを行うとともに、平成32年度に向けて新たなDMOに関する調査を行う。平成32年度には以上の調査を総括しながら研究のとりまとめを行う。
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