• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

学習者の表出動作から心的状態を推定し集計・フィードバックするシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 18H01059
研究機関放送大学

研究代表者

加藤 浩  放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)

研究分担者 葛岡 英明  東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (10241796)
鈴木 栄幸  茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20323199)
寺田 努  神戸大学, 工学研究科, 教授 (70324861)
久保田 善彦  玉川大学, 教育学研究科, 教授 (90432103)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード教育工学 / 教育評価 / HCI / ウェアラブルコンピューティング / 協調学習 / 生体情報
研究実績の概要

研究討議場面における顔動画から、前年度開発したデータ収集システムを用いて、参加者の表出を手作業により判定を行い、それを基準として自己の心的状態(ネガティブ/ポジティブ)のリアルタイム申告のデータとの一致度を検討してみたところ、自己申告データには欠損(押し忘れ)やタイミングの遅れが多く、表出との対応はかならずしも十分とは言えないことがわかった.これは会話中に自己申告を行うことの本質的な困難性によるものと考えられる.そこで、自己申告データに代わって、顔動画の表情認識によって自動的に表出を捉えることを試みた.その結果、機械学習を用いてポジティブ・ネガティブ・ニュートラルの3種類に単純化した表出を認識する手法を開発した.具体的には,カメラから得た表情の特徴量とメガネ型モーションセンサにより得た頭部の動き特徴量を用いて表出の推定を行った.評価実験から,提案手法はF値で約0.45の認識精度が得られ,ポジティブな表出の大まかな変化を認識できることを示した.他方、ネガティブな表出についての認識精度は十分ではなかった.また,頭部の動き特徴量に比べて,表情の特徴量が表出の推定に効果的であることがわかった.
状況内評価の自動推定にはセンサデータと正解データの関係を学習する必要がある.しかし、表出の自動認識の精度がまだ不十分なので、依然表出の正解ラベリングには手作業を必要とする.それには多大な時間を要するため,長時間かつ多人数の会話時のラベル作成を想定した場合には現実的でない.その多大な労力を軽減するために、推定結果を提案ラベルとしてアノテーションツール上に提示することで,ラベリング支援を行う手法を開発した.評価実験から,提案手法はラベリングにかかる時間は増加してしまうものの,6人中5人の被験者でポジティブな評価のラベリング精度が向上することを示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

被験者の自己申告によって表出の正解データを得る方法の信頼性が低いことが判明し、研究者が手作業で正解ラベルをつける方法をとらざるを得なかったため、データ処理に多大な時間を要した。

今後の研究の推進方策

当初の計画では、学習者自身が実践の最中にボタンを押してポジティブ/ネガティブを自己申告し、それを正解データとして利用する予定であったが、自己申告は欠損(押し忘れ)やタイミングの遅れが多く、正解データにできるほどの十分な信頼性がないことが判明した.そのため、 研究者が顔動画を見て手作業で正解ラベリングをすることになった.これに大きな工数がかかるため、ラベリング作業を支援するツールを開発したことにより、予定よりも方式開発に時間がかかった.それにより、機械学習による表情認識によって、表出を検出することはある程度できるようになったが、それがポジティブかネガティブかの判断についてはまだ誤りが多いことが分かった.
以上のことから、状況内評価を完全に自動認識するという目標を達成するのは非常に困難であることから、アプリケーションを次に述べるような、より実現可能性が高く有用性もある方向に軌道修正を行う.
今年度開発するアプリケーション:教育において①対面の授業、②テレビ会議システムを通したリアルタイムの遠隔授業、③ビデオ録画した授業、および④他の学習者の有無、という条件においては、講師の社会的存在感の程度が異なり、学習者の授業への集中度、リアクション、コミットメントの度合い、ひいては学習効果も変わってくる可能性がある.そこで本科研で開発した技術を用いて授業中の学習者の表出を分析し、 それらの条件が学習にどのような影響を及ぼすかを調査する.そして、その結果に基づいて、遠隔教育をより効果的にするデバイス/システムの検討を行う.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] 一斉授業において公的発話が私的発話に移行する過程の研究2019

    • 著者名/発表者名
      阿部桃花 久保田善彦
    • 雑誌名

      臨床教科教育学会誌

      巻: 19(1) ページ: 1-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 地上視点における太陽の日周運動学習を支援するソフトウェアの開発とその効果2019

    • 著者名/発表者名
      松岡浩平 葛岡英明 久保田善彦 金井司 鈴木栄幸 加藤浩
    • 雑誌名

      科学教育研究

      巻: 43(4) ページ: 308-322

    • DOI

      10.14935/jssej.43.308

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A Labeling Support System for Participants' Situated Assessments by Multi-modal Sensing2021

    • 著者名/発表者名
      Ayumi OHNISHI, Kyosuke KONDO, Hiroshi KATO, Tsutomu TERADA, Hideaki KUZUOKA, Yoshihiko KUBOTA, Hideyuki SUZUKI, and Masahiko TSUKAMOTO
    • 学会等名
      Proc. of the 19th International Conference on Advances in Mobile Computing and Multimedia (MoMM 2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] マルチモーダルセンシングによる状況内評価のラベリング支援手法2020

    • 著者名/発表者名
      近藤杏祐, 加藤 浩, 大西鮎美, 寺田 努, 葛岡英明, 久保田善彦, 鈴木栄幸, 塚本昌彦
    • 学会等名
      インタラクション2020論文集
  • [学会発表] Developing social capital among learners in collaborative learning through introducing yet another exchange system based on concept of "bi-directional debt"2019

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Suzuki, Hideo Funoai, Yoshihiko Kubota, Hiroshi Kato
    • 学会等名
      EdMedia + Innovative Learning 2019 conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of a Method and Application to Enhance Seminar-based Learning by Helping Learners Appropriate their Instructor's Words and to Use them as Cognitive Artifacts2019

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Suzuki, Hideo Funoai, Yoshihiko Kubota
    • 学会等名
      E-learn 2019 conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 表情・頭部姿勢・瞬きの情報に基づく状況内評価の推定2019

    • 著者名/発表者名
      近藤杏祐, 加藤 浩, 大西鮎美, 寺田 努, 葛岡英明, 久保田善彦, 鈴木栄幸, 塚本昌彦
    • 学会等名
      ユビキタス・ウェアラブルワークショップ2019論文集
  • [学会発表] 議論の場における参加者の表出自動推定のための他者ラベリングと自己申告評価およびセンサによる評価との関係調査2019

    • 著者名/発表者名
      近藤杏祐, 加藤 浩, 大西鮎美, 寺田 努, 葛岡英明, 久保田善彦, 鈴木栄幸, 塚本昌彦
    • 学会等名
      教育工学研究会(ET)
  • [学会発表] 自己表情が他者からフィードバックされることで笑顔が促進されるシステム2019

    • 著者名/発表者名
      堀江彩太, 寺田 努, 塚本昌彦
    • 学会等名
      日本ソフトウェア科学会第27回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2019)論文集
  • [学会発表] 指導教員の声の内化・認知的道具化を促すゼミナール活動振り返り手法および支援システムの開発2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木栄幸, 舟生日出男, 久保田善彦
    • 学会等名
      電子情報通信学会教育工学研究会2019-23
  • [学会発表] 指導教員のコトバの名言化によるゼミナール学習手法の提案および支援システムの開発2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木栄幸, 舟生日出男, 久保田善彦
    • 学会等名
      日本教育工学会2019年秋季全国大会
  • [学会発表] 漫才の「ツッコミ」役が担う仲介機能に着目したプレゼンテーションのための対話的トーク能力の育成2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木栄幸, 安達加琳
    • 学会等名
      協同教育学会第16回大会
  • [学会発表] 双方向債務概念に基づく相互援助規則の導入が大学生のプロジェクト型活動に与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木栄幸, 舟生日出男, 久保田善彦, 加藤浩
    • 学会等名
      電子情報通信学会教育工学研究会2019-35

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi