研究課題/領域番号 |
18H01116
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 恭司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員上級科学研究員 (20012445)
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研究分担者 |
池田 暁志 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (40755162)
高橋 篤史 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50314290)
柏原 正樹 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (60027381)
桑垣 樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60814621)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原始形式 / 楕円リー環 / 楕円アルティングン / 周期写像 / 楕円積分 / Drinfeld-Sokorov |
研究実績の概要 |
大域的原始形式とその周期写像ということで、年度当初に立てた三課題についてのそれぞれの進展を述べる。 第一:幾何的な消滅サイクルに付随するリー環については、1)リヨン大学の庵原謙治氏を招聘しChevalley型の不変式論の建設の共同研究を始めた。まだ具体的成果はないが、Cartierなどによる古典論の読み替え作業をが進行しており、次年度も継続する。他方、ハイパボリックルート系の理論をほぼ完成し出版の準備を進めた。楕円リー環などの最高ウェイト表現については、無限Chevalley basis の存在が重要で昨年に引き続き庵原氏とその存在条件を考察した。 第二:周期写像の大域的記述については、14個の例外型の一つ手前の楕円型の場合について、基本となる楕円アルティン群について、立教大学の斎藤義久氏と共同研究を、東京理科大学青木宏樹氏の協力のもとの進め、その幾何的構成と代数的構成の同一視と構造論、楕円アルティン群への楕円モジュラー群の作用の幾何学的決定まで行なった。現在その論文を執筆している。またモヂュラー群作用記述ために、当代表者が行なった楕円原始積分の周期写像論(未公表)が必要になることが分かり、現在その理論の整理をすすめている。 第三:原始形式と可積分系との関係に関して、当科研費の前の科研費による、Belavin及びその学生であるKonstantin Aleshkin 招聘して議論を行い大きな進展があった。すなわち高次剰余の理論を用いない原始形式の理論が建設される見通しとなった。その振動積分因子を用いた形式的な原始形式の構成の副産物として、Dubrovinにより研究されたDrinfeld-Sokorov hierarchy を全く一般の原始形式に対しても構築できることが分かった。このことは驚くべき進展と思われる。次年度も引き続きAleshkinと共同研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一:無限次元リー環については、表現論、とその応用の両方面に渡って理解が深まり、特にハイパボリックとカスプルート系の理論がまとまった本年は順調な進展である。 第二:周期写像については、14個の例外型を含む一般的な場合の周期写像の記述と、Bridgeland 理論との比較を目指した当初の課題についてはまだ手がついておらず、遅れていると言える。しかし他方、楕円アルティン群の理論を完成させたことは大きな進展であった。また古典楕円積分の原始形式による周期写像の言葉で書き換える作業も、当初計画にはなかったが、いずれ不可避な課題であったので予定外の進展と言える。 第三:原始形式と無限可積分系との関係は、昨年手がけ始めた時に比べ、原始形式のFourier展開がDrinfeld-Sokolov理論の一般化と理解できる、という驚く進展であるが、具体的それらの構造決定を目指すという立場からは、まだ道半ばと言える。 他に、原始形式の本の執筆作業をTodor Milanov, Si Li 開始したことも第一、二、三の課題をまたがる、進展である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要欄でも述べたように今後次のような方向が考えられる。 第一:(i)まず、引き続き庵原氏とChevalley型の不変式論の建設の共同研究をすすめる。(ii) ハイパボリックとカスプルート系の理論を公表する。 (iii) 楕円リー環などの最高ウェイト表現については、無限Chevalley basis の存在問題に、決着をつけたい。 第二:(i) 楕円アルティン群の理論を公表する。(i) 古典楕円積分の原始形式による周期写像の言葉で書き換えについては、Eisenstein級数の取り扱いに未だ解明すべき点が残っておおり、早急にまとめる。 (iii) ペンディングになっている、14個の例外方を含む一般的な場合の周期写像の記述と、Bridgeland 理論との比較を目指したい。特に圏論的な平坦構造の構成理論は分担者の池田暁志氏との共同研究を計画している。 第三:meteric構造を持たない原始形式から構成される無限可積分系の研究はホットなテーマであり、引き続きAleshkin氏との共同研究を進める。
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