研究課題/領域番号 |
18H01158
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大槻 純也 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (60513877)
|
研究分担者 |
品岡 寛 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40773023)
野村 悠祐 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20793756)
大関 真之 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80447549)
吉見 一慶 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (10586910)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 動的平均場法 / 磁性 / 第一原理計算 / 計算物理 / オープンソースソフトウェア / 量子モンテカルロ法 / 動的感受率 / 動的平均場理論 |
研究実績の概要 |
密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算と動的平均場理論(DMFT)による多体モデル計算を組み合わせることで、現実的な結晶構造と電子相関を考慮した電子状態(一粒子励起スペクトル)の計算が可能になってきている。一方で、磁性や超伝導の議論に必要な二粒子応答(静的・動的感受率)の計算は、数値計算の困難のために実現していない。データ科学など、多角的なアプローチを応用してこの困難を解決し、DFT+DMFT法による二粒子応答の計算を実現することが本研究の目的である。 この目的の遂行に向けて、本年度(初年度)は以下の成果を得た: (1) DMFT法における静的感受率の計算において問題となる計算量の問題を解決する近似法を考案した。その近似の結果得られた新しい式は、十分な精度を保ちつつ計算量を劇的に削減しており、現実的なd軌道やf軌道の詳細を考慮することが可能である。これにより、DFT+DMFT法を用いて現実の強相関化合物の磁性や軌道秩序を計算することが可能となった。 (2) 強相関電子系の数値計算で主要な役割を果たす温度グリーン関数をコンパクトに表現することができるIR基底を二粒子応答(二粒子グリーン関数)へ拡張した。この技術を用いることで、動的感受率の計算で障壁となるデータ量と計算量が劇的に緩和される。これにより、DFT+DMFT法による動的二粒子応答の計算が現実的なものとなった。 (3) 以下に示す4つのオープンソースソフトウェアの開発と公開を行った。(a)DFT+DMFT法による強相関化合物の電子状態計算プログラムDCore, (b)IR基底を手軽に利用できるライブラリirbasis, (c)連続時間量子モンテカルロ法による量子不純物模型ソルバーALPSCore/CT-HYB, (d)連続時間量子モンテカルロ法による量子多体格子模型ソルバーALPS/CT-INT.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DFT+DMFT法による静的感受率の計算[成果(1)]と動的感受率の計算[成果(2)]において、大きな進展があった。これらの方法は、d電子やf電子系の軌道自由度に起因する量的問題(データ量・計算量)を緩和し、これまで実現不可能であった現実的な強相関化合物の静的・動的感受率計算を可能とするものである。今後の応用が大いに期待される成果である。特に、動的感受率に関する進展は、当初の計画(第2年度目)を上回っている。成果(3)のオープンソースソフトウェア開発では、複数のプログラムの公開が着実に進んでいる。以上のことから、「当初の計画以上に進展している」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度中に開発した新しい静的感受率および動的感受率の計算法によって、計算量・データ量の根本的な問題は解決したといえる。今後はこの方法を現実的な化合物に応用していく。具体的には、静的感受率の計算による化合物の磁気・軌道秩序の定量的議論や動的感受率の計算による強相関化合物の磁気励起の計算を行う。 また、DFT+DMFT法の計算プログラムDCoreを中心として、静的・動的感受率計算のプログラムも随時公開し、成果をコミュニティに還元していく。
|