研究課題
密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算と動的平均場理論(DMFT)による量子多体モデル計算を組み合わせた電子状態計算法(DFT+DMFT)を二粒子相関の計算に応用し、データ科学的方法論を用いることで、強相関化合物の動的・静的感受率の計算を可能とする方法論を構築することが本研究の目的である。最終年度である本年度は以下の成果を得た:(1) 前年度に考案した静的感受率の近似計算法(SCL公式)を実際の強相関化合物に応用した。具体的には、強磁性を示す単体遷移金属Feに注目し、強磁性転移温度と強磁性モーメントをDFT+DMFT法により計算した。その結果、これまでの計算で得られていた転移温度と同程度の値が得られることを確認した。この結果は、SCL公式がモデル計算だけでなく、軌道自由度を持つ実際の化合物計算においても有用なことを示している。(2) 前年度までに確立した温度グリーン関数を表現する新しい中間表現基底(IR基底)を超伝導計算に応用した。超伝導転移温度を得るには、Migdal-Eliashberg方程式と呼ばれる方程式を解く必要があるが、この方程式は一粒子グリーン関数の松原振動数に関する和を含むため、現実的な超伝導転移温度である10K以下の計算は困難である。本研究では、この方程式の計算にIR基底を用いることで、松原振動数に関する和を効率的に実行し、低温の計算を実行した。それにより、第一原理計算を出発点として、Nbの超伝導転移(約10K)を得ることに成功した。これは、10K以下の現実的な超伝導転移温度計算に対して、IR基底を用いることの有用性を示す結果である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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