研究課題/領域番号 |
18H01233
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鷲尾 方一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70158608)
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研究分担者 |
東口 武史 宇都宮大学, 工学部, 教授 (80336289)
坂上 和之 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (80546333)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高輝度X線 / クラブ衝突 / 電子ビーム傾き制御 / 高輝度レーザー |
研究実績の概要 |
本課題はレーザー光を電子ビームによって散乱させるレーザーコンプトン散乱(LCS)において、電子ビームに傾きを付与して衝突を行うクラブ衝突と呼ばれる衝突方式を導入し、散乱X線光子数を増大させる。ここではクラブ衝突にとって有利な、高強度・超短パルスレーザー開発を推し進め、メインアンプであるYb:YAG Thin-disk再生増幅器を作製した。更にこの装置に透過型回折格子対を設置し、パルス圧縮試験を実施し、約1ピコ秒のパルス幅を実現しCPAレーザーシステムの試作が完了している状況である。ルミノシティを高めるためにはレーザー径を絞ることが重要である。単純な平凸レンズを用いた集光とナイフエッジ法による測定で27μmのレーザー径を実現した。この値は、ビーム品質が良いというThin-disk媒質の特性を活用できているからだと考えている。まとめると衝突用レーザーとして、ミリジュールピコ秒のレーザーシステムを、70cm×130cmのコンパクトな光学台に構築した。またクラブ衝突LCSを行うためのチャンバーとして、30度、45度、90度の3つの衝突角を検証可能なコンプトンチャンバーを開発、設置した。クラブ衝突LCS実験のためにレーザーシステムと加速器システムを予備的に同期させ、X線生成実験を実施した。この際にはレーザーは衝突角45度で入射させた。電子ビームとレーザーの相対的なタイミング、及び、空間的な位置を走査することでLCS-X線のピークを取得しLCSによるX線生成を確認した。更に電子ビームに傾きを付与し、クラブ衝突によるX線増大を試みた。今回の実験ではビームの安定性や同期の精度の問題から、クラブ衝突の優位性を見出すことはできなかったが、2019年度にはレーザーシステムと加速器システムの同期に問題を最小限に抑えて、安定的なレーザー供給ができるようシステムの性能向上を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に高輝度レーザーと傾き角を付けた電子ビートの間での、逆コンプトン散乱によるX線信号を検出することができた。これは、電子ビーム制御がきちんと達成されたことと、コンパクトな高輝度レーザーシステムが実現できたことによる。得られたX線信号には安定性がなく電子ビームとレーザーの同期の問題が露わになっている。そのため、時間同期については、今年度集中的に検討を加え、クラブ衝突の効果を確認することにしている。この際、レーザーのパルス幅の一層の短縮も重要な課題であり、これについても検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
電子ビーム及びレーザーそのものの発振等は当初の目的に近いところまで達成されている。残されている問題の一つ、電子ビームとレーザーの時間同期システムについては、一層の高度化が必要であり、その実現を目指すため、周波数逓倍器やバンドパスフィルターなど必要な物品を購入し、サブピコ秒の時間同期精度での衝突実験を実施し、安定なX線発生を確認する。一方レーザーシステムについても、一層の性能向上を目指し、たとえば、往復型の共振器構造からリング型の共振器構造も検討を加えることとする。
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