研究課題
基盤研究(B)
一部の細菌は、各種のプラスミドを保持する場合でも非保持株との競合培養で淘汰されない性質(プラスミド非感受性)を示す。本研究では、この発現に、従来、硫黄代謝系の主要転写制御因子として知られていたCysBを起点とする転写制御系の起動が重要であることを明らかにした。この代謝制御系の下流にはTCAサイクルやエネルギー代謝系が配置されており、細胞内の代謝の調節がプラスミド非感受性の鍵になることが強く示唆された。
環境微生物学
プラスミド非感受性は、一部の細菌だけが示す他に報告がない形質であり、その発現機構の解明はそれ自体が重要な科学的成果である。また、この現象の発現に、硫黄代謝系を中心とする代謝調節が重要である点は、プラスミドの負荷という言葉で言い表されてきた現象の実体が代謝の乱れにあったことを実験的に証明する意味で非常に意義深い。また、この機構が明らかになったことで、物質生産などに利用される汎用宿主をプラスミドベクター(さらには外来遺伝子)に対して非感受性化できる可能性も示され、産業応用等の観点からも重要である。