研究課題/領域番号 |
18H02293
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
堀口 健治 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (80041705)
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研究分担者 |
上林 千恵子 法政大学, 社会学部, 教授 (30255202)
大島 一二 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (40194138)
安藤 光義 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40261747)
内山 智裕 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (80378322)
大仲 克俊 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (80757378)
弦間 正彦 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90231729)
小島 宏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90344241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 技能実習制度 / 受入れ監理団体 / 送出し団体 / 技術ビザ / インターンシップ / 雇用型経営 / 労働力編成 / 経営内ヒエラルキー |
研究実績の概要 |
研究の目的:日本農業における外国人労働力、特に技能実習生の増加は急ピッチである。他の受入れ国と比べ今までは外国人受入比率は低かったが急速に変わりつつある。これらの急増する外国人を質量の観点からその大きさ・意義・農業経営内での役割を明らかにする。 研究実施計画:国内調査として北海道、南九州をグループとして実施した。北海道では家族経営に搾乳部門に特化して雇用されている女性の技能実習生、大規模経営では男性を主に各種の部門で日本人と同様に働く技能実習生の状況を把握した。それぞれの農業経営の中での外国人の役割が、同じ作目であったとしても、異なっているのである。南九州では今まで日本人で通年雇用者を賄うことが出来たが、この10年間では人が辞めた場合の補充や規模拡大で新規に募集する場合、日本人は応募がなく外国人に依存せざるを得なくなっている。家族経営主の熊本県八代市の施設園芸では規模が拡大するにつれて技能実習生が急増している。鹿児島では今まで農の雇用事業で日本人を雇用できていた大規模雇用型経営で、近年、急速に技能実習生が増えている。さらに幹部の日本人も不足するので、海外の大卒者を技術ビザでこの数年雇用するケースが見られる。技術ビザは入管にその専門の役割を書き入れた書類で申請し、雇用された農業法人で日本人幹部と同じ給与水準で役割を果たしている。数年毎のビザ更新だが制限年数はない。 これらに対応した送出し国のベトナムでの聞き取りを主にグループで調査した。送出し団体が主であるが、日本語学校を併設しており日本側の募集にすぐに応募できる体制を作っていた。色々な作業を可能にするためのトレーニングセンターも有し、日本の技能実習制度に対応していた。また技術ビザに応えるための大卒者の日本語学校も機能しており、日本での量だけではなく質的にも高い能力を持つ人材の供給力を有していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度の予算の一部も初年度に前出しして、急増する技能実習生の送出し国のベトナムおよび受け入れ先の南九州でのグループ調査を行った。この数年の技能実習生の急ピッチな増加や技術ビザ、さらにはインターンシップ等の新たな形での農業での外国人の急増は、実態調査を急いで行うべき状況にあった。実際に通年雇用に対する日本人の応募者が激減する中で、南九州では熊本県八代市の拡大する家族経営での外国人受入が、鹿児島では大規模雇用型経営での外国人受け入れへの転換が、ともに進んでいた。八代市ではトマト栽培の棟の増加が雇用者の増加を求め、技能実習生がその需要を埋めていた。鹿児島ではもともと日本人雇用の大規模経営が、やめた人の補充から規模拡大による人の募集まで、外国人を取り込むことで対処することに大きく踏み切っていた。しかも単純労働の外国人だけではなく、今まで日本人幹部が果たしていたヒラの従業員の指導に、外国大学卒の技術ビザの外国人も入れ始めた。 すでに採用が始まっている技能実習生3号(4,5年生)、2019年4月1日から始まる特定技能1号、これらで採用される外国人はヒラの技能実習生への指導が期待されていると思われるが、技術ビザの人材とどうかかわるか、大規模雇用型経営内での階層ヒエラルキーについて詳細を急いで明らかにすべきである。 他方、送出し国のベトナムは、日本に特化した送出し団体が多くあり、寮と教室を併設して日本側の需要に応える体制が出来ていた。これらは韓国や台湾への送り出しに関与せず、日本語のレベルをN4まで要求する企業が多い日本側に応え、さらに必要な技術を学ばせるトレーニングセンターを有していた。中国語の学習をベトナム人に求めない台湾、自ら学習して試験を受けさせる韓国、これに対して来日8か月前に面接等を行い雇用契約を結んで事前学習を求める日本と大きく異なる。
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今後の研究の推進方策 |
技能実習生として来日が急増しているベトナムでの現地調査と、受入れ地域として香川県での現地調査を主にして、研究計画を作成する。高卒者を主に農村からの応募者が多いとみられるベトナムの技能実習生、これらの供給源である農村を調査し、あわせて技能実習から帰国した者の追跡調査を行うことで、日本での3年の労働成果の現れ方を把握する。同時に、村内で海外や国内出稼ぎ者、あるいは村内での就職など、若者の就職状態を調査する。その中で、すでに技能実習を終えたものにとって日本への再渡航が可能になった特定技能への希望者が多いことが報道されているが、これらの実状、期待する内容を調査する。 さらに送り出しに熱心なベトナムの大学において、現役学生のインターンシップの勧めや卒業生の技術ビザによる就職、これらへの応援体制とその意義を把握する。急増する大学生、これらの就職難への対応といわれるが、ハノイにあるベトナム国立農業大学を主に上記の様子を明らかにする。 日本では、雇用型大規模経営が2000年代に入って外国人を多く受け入れて来た香川県で、複数の受入監理団体の協力を得て、個別の法人における日本人と外国人、ヒラと幹部との関係を明らかにする。農業経営での職階・ヒエラルキーが形成され、外国人の役割も質的に広がっているようである。これらの管理団体による現地募集での面接に同行し、そして来日以降の仕事の役割等を、日本人と比較しながら、明らかにしたい。職階の中での給与や役割を明らかにし、さらに技能実習3号、あるいは特定技能1号への対応を見ることで、今後に想定される農業での雇用体制を明らかにする。 日本においても補足調査として、技能実習3号、特定技能1号,技術ビザで来日し、すでに法人で仕事をしている外国人への聞き取りと法人関係者の考え方を聴取することにする。
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