研究課題/領域番号 |
18H02493
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平瀬 祥太朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90635559)
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研究分担者 |
岩崎 渉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50545019)
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 雑種種分化 / 交雑帯 / 日本海 / 系統地理 / 核ゲノム / ミトコンドリアゲノム / 表現型 |
研究実績の概要 |
近年、遺伝的に分化した集団間の交雑がゲノム変異の新たな組み合わせを創出し、多くの種分化に寄与したことが明らかになってきた。本研究は遺伝的に大きく分化したアゴハゼとシロウオの太平洋グループと日本海グループの交雑集団のゲノム解析を行い、そこでの進化の実態について研究することを目的としている。 de novo ゲノムシーケンスによってアゴハゼのリファレンスゲノムを構築した上で、RAD-seq、全ゲノムリシーケンスを行なったところ、三陸海岸の交雑集団のゲノムは約50%の混合比で各グループ由来である一方、多くのゲノム領域が片方のグループのゲノムに偏っているモザイク的な構造を有していることが示された。また、この交雑集団の個体が有するミトコンドリアゲノムのコード領域において、アミノ酸を変化させる非同義置換が多く生じていることが明らかになり、交雑によって生じたゲノムの新たな組み合わせが、交雑集団におけるミトゲノムの加速進化を引き起こした可能性が示された。 シロウオの2つの交雑集団のゲノム構成をRAD-seqにより推定した結果、常磐鹿島灘の交雑集団は太平洋グループに近いゲノムの混合比を示したのに対し、瀬戸内海の交雑集団のゲノム構成は日本海グループに偏っていた。次に、グループの間で形質が異なっている脊椎骨数、体サイズについて調べた結果、交雑集団における脊椎骨数のパターンは、ゲノム構成とおおよそ一致した傾向を示した。一方、体サイズについては、ゲノム構成が太平洋グループに近い常磐・鹿島灘の交雑集団が日本海グループの大きい体サイズを示し、ゲノム構成が日本海グループに近い瀬戸内海の交雑集団が中間の体サイズを示すなど、ゲノム構成と対応しない表現型が示された。これらの結果は、交雑集団の進化が環境の違いによって左右され、さらなる多様性が創出されることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全ゲノム解析、ミトコンドリアゲノムシーケンスなどを駆使することで、当初の狙い通り、交雑集団における進化の実態を明確に捉えられているため。
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今後の研究の推進方策 |
シロウオについては、高精度なリファレンスゲノムを構築した上で、全ゲノム解析によって太平洋グループと日本海グループ、交雑集団のゲノム構成を調べる。アゴハゼについては、今年度のフィールド調査によって、瀬戸内に新たな交雑集団を発見した。そこで、この交雑集団のゲノム構成について調査し、そこでの進化の実態を明らかにするとともに、三陸海岸の交雑集団と比較する。
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