研究実績の概要 |
抗癌核酸薬の創薬シーズとなる新規の癌抑制型マイクロRNA(TS-miR)を同定するため、ヒト大腸癌細胞株のHCT116用いて2,565種のヒトmiRライブラリーの細胞増殖スクリーニングを行った。その結果、p53遺伝子の有無に関わらず顕著な増殖抑制効果を認める138種のmiRを選出した。 さらに、二次スクリーニングの結果、強い抗腫瘍効果を持つ7種の癌抑制型miRs(miR-1293, miR-876-3p, miR-4438, miR-6751-5p, miR-634, miR-3140-3p, miR-92a-2-5p)を選出した。詳細な機能解析から、miR-1293、miR-876-3p、miR-6751-5p, miR-3140-3pの4種が、ブロモドメインタンパク質遺伝子BRD4を直接標的にすることを明らかにした。それらの中で、miR-1293は、BRD4の抑制に加え、DNA修復経路に関わる複数の遺伝子(APEX1、RPA1、POLD4)を直接標的にそれら機能を抑制することを明らかにした。miR-1293の導入により損傷DNAの修復は顕著に抑制されγH2AXの蓄積が確認された。マウスXenograft腫瘍モデルを用いたmiR-1293の治療実験では、皮下腫瘍周囲へのmiR-1293局所投与により顕著な腫瘍の増殖抑制効果が確認された。一方、miR-3140-3pは神経芽腫細胞においてMYCNおよびMYCを抑制し、増殖を抑制した。さらにBET阻害剤耐性はERKの活性化によるMYCNの安定化により生じることを示し、miR-3140-3pはMAP3K3を標的とすることでERKの活性を抑制し、耐性を克服する可能性を示した。以上より、miR 抗癌核酸薬の候補として期待がかかる。
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