研究実績の概要 |
ハンチントン病等のポリグルタミン病は、唯一核内に病因タンパク質の重合体(核内封入体)が形成される神経変性疾患である。神経細胞核内の機能異常がその疾患進行に関わっていると考えられ、実際、数千もの遺伝子が発現変化することが見出されている。これまでに、我々を含めた研究グループから、NF-Yなどいくつかの転写調節因子がハンチンチン封入体に取り込まれ、活性阻害されることが報告されている。しかしながら、これだけでは多大な遺伝子発現変化は説明できず、これに関わるよりダイナミックな分子機構の存在が期待されている。本研究では、ハンチントン病において、最新ゲノム技術を用いた変性神経細胞での包括的クロマチン構造解析を行うことにより、神経変性に関わる新規病態メカニズムを明らかにする。これまでに、ハンチントン病で蓄積しているハンチンチン凝集体の免疫沈降条件を確立し、少量ながら共沈ゲノムDNAの存在が確認できている。一方、微量DNAからライブラリを作成しシーケンス解析する方法も確立し、ChIP-seq解析の準備は整っている。別に、ゲノムDNA の3次元構造変化を期待し、ループ形成に関わるCTCFのクロマチン免疫沈降についても検討を進めている。一方、パーキンソン病に関わるαシヌクレインについても、その凝集の病理的意義の解析を進め、まず、変異体ライブラリを用いることで凝集制御部位を新たに特定しつつあり、本内容を第45回日本分子生物学会年会のサイエンスピッチやポスターで発表した。一方、疾患脳を用いたプロテオミクスによりαシヌクレインの新たな部位のリン酸化を同定し、これが毒性オリゴマー形成を誘導することも明らかとした(Matsui H,,, Yamanaka T et al. PNAS in press)。
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