研究実績の概要 |
PTH高頻度投与マウスにおいて、PTHが骨芽細胞の基質合成を亢進するだけでなく、石灰化基質の構成要素であるリン酸イオンの生成・供与に関する膜輸送体・酵素群、例えば、ALP, PHOSPHO1, TNAP, ENPP1の遺伝子発現を上昇させることを明らかにしたが、その一方で、SIBLING familyの遺伝子発現が有意に上昇し、それを分解するcathepsin Bの発現低下、ならびに、Phex遺伝子発現の上昇が認められた。このことは、PTH投与で基質蛋白合成が進む一方、基質石灰化も亢進するメカニズムが備わっていることを示唆している。そこで申請者は、本年度は、逆の状況を1)低リン血症モデルであるNaPiIIa/IIc遺伝子欠損マウス、および、2) 低リン血症だけでなく、Phex遺伝子の3’領域に変異を有するためX染色体連鎖性低リン血症性くる病(XLH)のモデルであるHypマウスを用いて解析した。その結果、NaPiIIa/IIcマウスおよびHypマウスにおいてALP, PHOSPHO1, TNAP, ENPP1の遺伝子発現は大きく変わらず、また、免疫局在も大きく変わらなかった。しかし、NaPiIIa/IIcマウスの成長板軟骨は野生型マウスと変わらなかったのに対して、Hypマウスでは成長板軟骨の肥大化層に石灰化が誘導されず、不規則な骨・軟骨境界部を呈していた。その部位の軟骨細胞は肥大化ではなく小腔に入った小型の細胞として観察されるものも存在し、その周囲の軟骨基質にはDMP-1やosteopontinなどSIBLING family陽性反応が認められた。よって、Hypマウスでは、Phex変異のためSIBLING familyのカテプシンBによる分解を抑制できず、それらが軟骨内骨化部位に大量に残存・蓄積してしまうことで、血管の軟骨侵入が阻害される可能性が示唆された。
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