研究課題/領域番号 |
18H03009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 幹 東北大学, 大学病院, 講師 (40380852)
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研究分担者 |
福本 敏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30264253)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | EMT |
研究実績の概要 |
外胚葉性器官の再生には、上皮系細胞と間葉系細胞を配置し、上皮間葉相互作用を利用して分化誘導する必要がある。我々は以前にiPS細胞からエナメル芽細胞を誘導することに成功したが、歯の完全再生はまだ難しい。そこで、上皮系細胞から間葉系細胞を誘導する上皮間葉転換(EMT)を応用して上皮間葉相互作用を起こせば、上皮系の単一細胞で外胚葉器官の分化が可能となる。そのため、上皮からの外胚葉器官形成の研究が注目されているが、硬組織におけるEMT研究はほとんど行われていない。我々は以前の研究で、Sox21がエナメル芽細胞で発現しており、分化やEMTに重要な役割を持っていることを発見した。更に、Sox21KOマウスでは骨形成不全も見られ、骨の重要な役割を有している可能性が高い。そこで、本研究では、硬組織形成におけるEMTのメカニズムを解析する。 前述の様にSox21は間葉系や上皮系、両方に影響を与える事から、他の神経堤由来の外胚葉器官に限らず、想定していない様な器官において、発現している可能性が考えられる。そこで、まず始めに各臓器におけるSox21の部位を特定する事にした。そこで各部位からRNAを回収し、RT-PCR法にて発現部位を検討した。その結果、脳と皮膚以外に、少量ではあるが、骨髄細胞、全血液細胞、骨芽細胞でも発現が見られた。Sox21はSox2を阻害する事が知られており、Sox2は歯においては上皮系細胞で発現しており、また毛髪では間葉系細胞で発現している。この様に、Sox2も器官によって異なった発現パターンを示す。 我々は以前に、Sox21が上皮系細胞であるエナメル芽細胞で発現していることを発見したが、上皮系細胞では無い、骨髄細胞、全血液細胞、骨芽細胞でも発現していることから、上皮系細胞と間葉系細胞ではSox21の機能が異なっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sox21のRNA発現とタンパク発現パターンが異なっており、正確な発現部位を特定することが困難となっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究で、Sox21の発現部位が、RNAレベルで観察された。そこで、今年度はSox21抗体を複数用いて、免疫染色にてタンパクレベルでのSox21発現部位の特定、及び特異性の高い抗体を選別する。また、骨髄中または全血液中のどの細胞がSox21を発現しているかを特定するために、フローサイトメトリーを使用し、特異性の高い抗体を用いてSox21陽性細胞を検出し、SSC-AとFSC-Hから、その陽性細胞群の区画から、細胞の種類を推測する。この推測結果を基に、細胞表面マーカーを用いたマグネットビーズにて特定の細胞を回収し、Sox21の発現を調べ、骨髄中及び全血液中のSox21陽性細胞を特定する。次に発現が認められた細胞に対して、siRNAを用いて発現を抑制し、マイクロアレーまたはRNAシークエンスにてその影響を調べる。更に上皮系細胞における影響と、間葉系細胞における影響を比較し、各細胞系譜におけるSox21の影響を検討する。 また、Sox21欠損マウスから、骨髄と全血液を回収し、マイクロアレーまたはRNAシークエンスにて、骨髄及び全血液における影響を検討し、in vivoにおけるSox21の影響を見るだけで無く、Sox21を発現していないその他の細胞に与える影響も同時に検討する。更に、上皮系細胞であるエナメル芽細胞と比較し、上皮系細胞と間葉系細胞におけるSox21の役割の違いについて検討する。 また、Sox21とヒト疾患等の関連性をスクリーニングするために、疾患遺伝子データベースOMIMを用いて候補疾患を予想すると共に、国際小児歯科学会などの関連学会に参加し、遺伝子疾患等の情報収集を行う予定である。
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