研究課題
外胚葉性器官の分化には、様々な分子により、上皮と間葉が相互に作用することによって分化が進む。そのため、外胚葉性器官の再生には、上皮系細胞と間葉系細胞がお互い接触するように配置し、上皮間葉相互作用を利用して分化誘導する必要がある。我々はこの技術を応用し、iPS細胞からエナメル芽細胞を誘導することに成功した。しかし、実用的な歯の再生はまだ難しいのが現状である。そこで、上皮系細胞から間葉系細胞を誘導する上皮間葉転換(EMT)を応用して間葉系細胞を作り出し、この間葉系細胞を用いて上皮間葉相互作用を起こせば、上皮系の単一細胞で外胚葉器官の分化が可能となる。そのため、他臓器では上皮からの外胚葉器官形成の研究が注目されているが、硬組織におけるEMT研究はほとんど行われていないのが現状である。我々は以前の研究で、Sox21がエナメル芽細胞で発現しており、EMTを通して、細胞分化や石灰化に重要な役割を持っていることを発見した。更に、Sox21欠損マウスでは、生後直後では、野生型と遺伝子欠損マウスで表現系に大きな違いは見られないが、成長と共に骨格の発達が遅れ、体重は約70%となり、大腿骨のCT像は骨粗鬆症であった。このようにSox21が歯だけでは無く、骨にも影響を与えている可能性が示唆された。そこで、本研究では、硬組織形成におけるEMTのメカニズムを解析する。昨年までの結果成果として、各臓器におけるSox21の部位を検討したところ、脳と皮膚以外に、少量ではあるが、骨髄細胞、全血液細胞、骨芽細胞でも発現が見られた。更に各臓器における免疫染色を行ったところ、脳や皮膚、毛髪、骨髄以外にも、扁桃で発現していることを発見した。この結果から、Sox21はリンパ系細胞で発現する事が示唆された。そこで、本年度では、骨髄中のどの細胞がSox21を発現しているかを詳細に検討することにした。
2: おおむね順調に進展している
生後3週のマウスから骨髄細胞を回収し、磁性細胞分離キットを用いて、B細胞および、T細胞、NK細胞、樹状細胞を分離し、PCRを行ったところ、B細胞および、T細胞でSox21の発現が認められた。そこで、Sox21を欠損させた骨髄細胞に対し、マイクロアレイを行ったところ、分化や遊走に関する分子の発現上昇が見られたのに対し、免疫応答反応が減少していることが判明した。
昨年度までの研究では、Sox21は骨髄中でT細胞とB細胞で発現していた。更に骨髄中のSox21を欠損させることにより、細胞分化、細胞遊走、免疫応答に影響が出る事が判明した、そこで今後はT細胞、B細胞におけるSox21との関連分子、細胞内シグナル解析を行い、機能解析とEMTとの関連性を明らかにしていく。
東北大学 プレスリリース
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