以前の研究でSox21が歯のエナメル質形成や、上皮間葉転換(EMT)に重要であることを報告したが、骨形成にも異常が見られる事が示唆された。、しかしながら硬組織におけるEMT研究はほとんど行われていないのが現状である。そこで、Sox21の発現を網羅的に解析したところ、骨髄で発現する事が明らかとなった。そこで、骨髄細胞において、Sox21の発現を更に検討したところ、T細胞やB細胞で発現が認められた。この結果から石灰化を誘導する分子が、免疫系にも関与している可能性が示唆された。EMTを起こす環境として、癌化が挙げられる。通常、癌化した細胞は免疫によって排除されるが、この免疫チェックポイントをすり抜けることにより、癌細胞が増殖する。Sox21が癌化に関与していると言う報告もあり、Sox21は石灰化やEMTだけで無く、免疫にも関与している可能性が示された。歯胚を原発とする腫瘍として、エナメル上皮腫が挙げられるが、その発生頻度は低い。今回の結果は、歯を形成する分子が癌化を抑制し、免疫や石灰化を亢進させている可能性が考えられた。そこで、歯の石灰化に関与する分子をスクリーニングしたところ、腫瘍マーカーとして知られる分子が、成熟エナメル芽細胞で複数発現していることを突き止めた。その内、1つの分子の発現をエナメル芽細胞で抑制させたところ、Cell cycle誘導分子の発現が阻害され、細胞増殖が抑制された。更にSox21の発現が上昇し、間葉系マーカーの発現が減少し、その一方でSkin、keratinocyte、epidermal cell分化マーカーの発現が上昇した。 このことから、本分子を抑制することにより細胞増殖が抑制され、上皮系細胞分化が誘導される可能性が示唆された。
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