本研究課題は、トランスクリプトーム解析を用いて、歯の運命決定因子および歯の形態形成に重要な因子の同定を目的として研究を開始を行った。 本年度は、CAGE法を用いたトランスクリプトーム解析を行い、器官運命決定に関わると思われるいくつかの候補遺伝子の同定に成功した。さらに、Zenbu databaseとの比較を行い、歯に特異的なCAGE peakの同定に成功した。このpeak周辺には、anotationされている既知の遺伝子が認められず、未だ報告されていない未知の転写開始点である可能性が想定された。CAGE法は、mRNAの3'末端を特異的に検出することから、転写開始点の網羅的検索に優れている一方で、mRNAの全配列は読めないことから、未知のexon配列の同定は困難である。そこで、歯の発生期であるE11-P7までの歯のtotal RNAを抽出し、全サンプルを混合し、deep RNA-seqを行い、mRNAのexon配列の同定を試みた。その結果、CAGE法にてpeakを認めた部位に、mRNA exonと思われる配列を確認することができた。同配列を解析すると、開始コドンおよび終止コドンを含むprotein coding sequenceである可能性が判明した。そこで、推定されるアミノ酸配列のペプチドを合成し、免疫抗体を作成し、マウス胎仔での局在を免疫染色法を用いて確認したところ、発生歯胚においてシグナルが確認された。本結果は、未知の歯特異的遺伝子の存在を示し、未だ発見されていない遺伝子の存在を示唆するものであると考えられる。
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