これまでの研究で、PM2.5構成成分である、生物由来成分(LPS)および加熱PM2.5(H-PM2.5)を胎仔期に曝露し、雄性出生仔マウスの免疫系・生殖系に一部影響が生じることを明らかにしたが、PM2.5構成成分である有機化学物質(OC)およびH-PM2.5の複合曝露による影響は不明であり、検討した。 ICR系妊娠マウス30匹を用いた。Contorol群とH-PM2.5曝露群、H-PM2.5+OC曝露群に分け、1群10匹としH-PM2.5曝露群には、1匹あたり0.2mgの有機化学物質を除去したH-PM2.5群、H-PM2.5+OC群には1匹あたり0.2mgのH-PM2.5とOCを妊娠7、14日目に気管内投与した。出生児マウスが5週齢15週齢の時点で免疫系、雄性生殖系への影響を検討した。なお、15週齢における免疫系への影響は、2%卵白アルブミン(OVA)を計8回の経気道曝露することで気管支喘息病態モデルを作成し、アレルギー憎悪作用についても検討を行った。気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、造精機能、肺および精巣における遺伝子発現等で評価した。 H-PM2.5あるいはH-PM2.5+OCの胎児期曝露による出生マウスの造精機能を検討したところ1日精子産出量が5週齢及び15週齢のH-PM2.5+OC群においてそれぞれ49.8%、32.5%有意に低下した。H-PM2.5群ではこれらの影響は認められなかった。H-PM2.5あるいはH-PM2.5+OCの胎児期曝露による免疫系への影響を検討したところ15 週齢の気管支喘息病態モデルにおいてH-PM2.5+OVA群及びH-PM2.5+OC+OVA群はOVA群と比較してそれぞれ2.13倍、2.96倍有意に増加した。以上の結果より、H-PM2.5とOCの胎児期複合曝露は次世代の雄性生殖系および免疫系への影響の寄与因子であることが示唆された。
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