研究課題/領域番号 |
18H03190
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (30432446)
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研究分担者 |
土井 健史 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00211409)
吉田 卓也 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (00294116)
石本 憲司 大阪大学, 薬学研究科, 特任講師(常勤) (00572984)
樋野 展正 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (90469916)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核内受容体 / NASH / 分子代謝学 / PPAR / LPIN / PGAM5 |
研究実績の概要 |
近年の食生活や運動不足によるエネルギー過剰の状態は、体内に余剰の脂肪蓄積を促し肥満となる。それと共に脂肪肝から肝線維化を経て肝硬変、肝癌へと至る非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に罹患する患者数も急増している。これら問題を解消するためには、NASHの発症メカニズムを理解し、新たな治療法の開発が喫緊の課題である。 核内受容体PPARは脂肪酸等をリガンドとする転写調節因子であり、肝臓や骨格筋等で脂質代謝を調節しエネルギー消費を促すことから、代謝性疾患の予防・治療の標的分子として注目されている。本研究は、NASHの予防・治療戦略を構築するために、脂質センサー分子である核内受容体やその関連因子について、翻訳後修飾等を介したエネルギー消費機構等の解明を行うものである。 まず、PPAR活性化剤の評価系を構築すると共に、既存のPPAR活性化剤とは化学構造を異にする化合物を見出した。それら活性化剤について、新規NASH治療薬になり得るかを解析するための投与量の検討を行った。さらに、新規活性化剤による活性制御機構を分子レベルで明らかにするために、活性化剤とPPARとの複合体の立体構造解析に着手した。 また、これまでに我々は核内においてPPARの転写を制御し脂肪酸の燃焼を促し、細胞質においては脂質の生合成を制御するユニークな脂質制御因子LPINについて、転写制御やタンパク質の分解機構を解明してきた。今回LPINの相互作用因子を免疫沈降実験により探索した結果、脱リン酸化酵素PGAM5の同定に成功した。さらに、PGAM5によって脱リン酸化されたLPINは細胞質から核内に移行することを明らかにした。今回得られた知見を基にLPINの核内量を増加させることで、NASHの原因である脂肪の蓄積を改善できる可能性が考えられることから、本研究成果は意義深いものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、脂質センサー分子である核内受容体PPARやその関連因子LIPINについて、申請者がこれまでに明らかにしてきた翻訳後修飾に関する知見や新たに開発した活性化分子などを活用しNASHの予防・治療戦略を構築するために、核内受容体等の翻訳後修飾等を介したエネルギー消費機構や炎症制御メカニズムの解明を行うものである。 独自にPPAR活性化剤の評価系を構築し、スクリーニングにより新たに見出した新規PPAR活性化剤について、NASH治療薬になりうるかを評価する上で、既存のリガンドとは大きくその化学構造を異にするため、まずは当該薬物の投与量の検討を行った。その結果、in vivoにおいてPPARを活性化することを明らかにすると共に、投与量についても設定できた。今後、これら化合物を用いた薬効確認を実施する。さらに、新規活性化剤による活性制御機構を分子レベルで明らかにするために、活性化剤とPPARとの複合体の立体構造情報を得るための条件を決定した。 一方、核内においてPPARの転写を制御し脂肪酸の燃焼を促し、細胞質においては脂質の生合成を制御するユニークな脂質制御因子LPINについて、相互作用因子を免疫沈降実験により探索した結果、脱リン酸化酵素PGAM5の同定に成功した。さらに、PGAM5によって脱リン酸化されたLPINは、細胞質から核内に移行することを明らかとした。 このように本研究は、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までに、PPARのリガンド評価系を構築し、新規活性化剤の取得に成功すると共に、それらの投与量を設定した。今後は病態モデルにおける薬効を確認すると共に、それら化合物による活性化機構の詳細を明らかにするために、PPAR-活性化剤の複合体の立体構造を明らかにする。 また、翻訳後修飾による転写制御機構の一端を解明したが、より理解を深めるために、翻訳後修飾部位で相互作用する因子の同定に着手している。今後それら因子を同定することで翻訳後修飾を介した新たな活性化制御機構の解明を目指す。
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