研究課題
近年、世界各国の人々は春秋の花粉に接触する機会が多くなり、秋の花粉症患者が増加する可能性がある。しかし、それらの花粉の飛散情報自体がほとんど無いのが現状である。本研究では、さいたま市都市部において、春秋季のスギ、ヒノキ、ブタクサ等の花粉飛散期において、花粉やアレルゲンの粒径別捕集、花粉飛散情報、特に、世界で初めて、新規共通抗原性の秋花粉微小アレルゲン高感度計測法を構築し、アレルゲンの解析研究を進めてきた。都市部において、ブタクサアレルゲンAmb a 1は、大気汚染物質や降水等と共にアレルゲンの粒子別濃度を計測して、秋季花粉症要因のブタクサ、オオブタクサなどの草本類花粉飛散状況を観測し、かつ気象や人為的活動の影響を調査した。花粉が大気汚染化学種の沈着や湿度等の影響を受け、表面の均一、不均一化学反応により変性、破裂に伴った微小アレルゲン粒子が放出した。そのため、花粉アレルゲンの感作成立・アジュバント作用増強(変異原性・生体毒性に伴うアレルギー増悪)の可能性が示唆された。さらに、芝刈り機での不適切に刈られた草本類植物からの花粉が大量に舞い上がり、都市大気中の花粉飛散量が増加した現象も発見した。スギ花粉アレルゲンCry j 1と同様に、ヒノキ花粉アレルゲンCha o1に関しても降雨により微小なアレルゲン粒子となり飛散している可能性があり、花粉の飛散挙動とアレルゲンの挙動は一致していなかった。都市部に飛散している花粉が大気汚染化学種の沈着や湿度等の影響を受け、破裂や表面の均一、不均一化学反応による変性過程により、微小化によるアレルゲン微小粒子が放出し、花粉症罹患の高発症率の一因と推定される。そのため、花粉アレルゲンの人体呼吸器系深部への侵入を確認することができた。また複合アレルゲンによる感作成立・アジュバント作用増強の可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
国内外において、都市部に飛散している花粉が大気汚染化学種の沈着や湿度等の影響を受け、破裂や表面の均一、不均一化学反応による変性過程により、微小化によるアレルゲン微小粒子が放出し、都市部における花粉症罹患の高発症率の一因を確認することができた。また他の大気浮遊粒子状物質の有害成分の関与も調査している。さらに、花粉アレルゲン飛散情報の少ない花粉の飛散状況を把握し、かつ共通抗原性アレルゲンなどの高感度計測法を確立し、フィ―ルド調査への活用や花粉対策に貢献した。さらに、大気汚染や花粉調査に関して、評価の高い関連学術論文を多数公表し、多数のテレビ、ラジオなどへの出演・報道などを受けて、社会的反響も大きかった。上記の研究成果を含めて数編の国際誌学術論文の掲載もあった。
今後、花粉の飛散期において、さいたま市と中国上海市における花粉アレルゲン、大気有害物質(発癌性芳香族炭化水素類(PAHs)、重金属類など)を含む複合微小粒子をサンプリングしてして計測することで、それらの人体への健康影響を評価しようとしている。具体的に以下の項目について、研究を進めていく予定である。1) 春季または秋季の花粉とその共通抗原性アレルゲン、大気有害物による複合有害微小粒子形成機構への大気化学事例研究を継続して行う。例えば、アレルゲン含有粒子の粒径分布などを継続して調査する。特に、都市部大気中での通年性花粉アレルゲンの放出に伴うアレルゲン微小粒子(人体影響顕著なPM1.0以下)などの生成、ならびにアレルゲン微小粒子と各種の芳香族炭化水素類(PAHs)などとの混合状態や微粒子形成機構などの現象を調査し、その原因を解析する。2) 通年性花粉飛散量およびその共通抗原性のアレルゲン微小粒子の形成における大気環境学と花粉学の関連性(フィールド観測)の異分野融合事例研究、特に大気中の花粉アレルゲンの計測と同時に、強毒5環から6環の芳香族炭化水素類(PAHs)を含む化石燃料燃焼や自動車排気微粒子等の無機または有機の有害化学物質、通年性の花粉生理的変化、アレルゲン放出への様々な影響因子を継続して調査する。3) 以上、フィールド調査に合わせて、実験室内の実験や学術的研究なども継続して行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
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