内殻電離状態のプラズマから放射されるKα線はそのエネルギーが数keVであり、XFELの光子エネルギーに相当するため、内殻電離状態の原子がX線の増幅のためのゲイン媒質として利用可能である。本研究では、高強度レーザーによりゲイン媒質となる内殻電離状態のプラズマを生成し、そこにXFELをシード光として入射することで、X線増幅を行う。 2018年度は、本研究の主力の計測器となる、増幅スペクトル計測のためのシングルショットスペクトロメーターの設計・開発を行った。これには、楕円ミラー、シリコン(111)分光結晶とX線CCDカメラを組み合わせることとした。 更に、このスペクトロメーターを用いて、XFELと高強度レーザーを組み合わせたX線増幅実験を実施した。ゲイン媒質として銅の薄膜を用い、そこに高強度レーザーを集光照射し、銅の内殻電離状態のプラズマを生成した。これはKα線の計測から確認された。そのプラズマをゲイン媒質とし、シード光であるXFELを集光して入射した。Kα線は8.05 keVなので、XFELはその光子エネルギーに合わせた。XFELの集光にはベリリウムレンズを用い、その下流側にシングルショットスペクトロメーターを設置し、増幅スペクトルの観測を試みた。しかし、残念ながら、この実験ではX線増幅を観測することはできなかった。この理由は、ベリリウムレンズにおけるXFELの散乱がシングルショットスペクトロメーターのデータを著しく劣化させるためであった。
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