研究課題/領域番号 |
18H03599
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今村 真央 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (60748135)
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研究分担者 |
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10586382)
池田 一人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40708202)
デスーザ ローハン 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (60767903)
高田 峰夫 広島修道大学, 人文学部, 教授 (80258277)
藤田 幸一 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (80272441)
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80767682)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90468835)
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミャンマー / インド / バングラデシュ / 国境 |
研究実績の概要 |
初年度はまず本研究プロジェクトの意味と意義を確認し、グループ全体としての以下3点の方針・方向を決定した。①分担書・協力者は、各自の研究の「問い」を随時アップデートするとともに他のメンバーと共有すること、②事例調査の比較・統合に積極的に取り組むこと、③大きな仮説やパラダイムの提示、研究方法論等での貢献を積極的にめざすこと。 本プロジェクト・チームは農村経済学、文化人類学、歴史学、地理学、言語学、社会学など様々な学術分野の研究者によってから構成されている。そのためフィールドを共にしていても、研究の問いが大幅に異なるということが頻繁に生じる。しかし分野が異なっているからこそ共同研究から発見が生まれてくることがあり、本プロジェクトはまさしくこの効果を狙っている。インド・バングラデシュ・ミャンマーに関するパイオニア的研究として軌道に乗せるため、国内外の関連する研究ネットワークとの連携や、重要文献の共有などプロジェクトの基盤整備を戦略的的に進めた。 国内外とのネットワーク構築においては、ミャンマー研究とインド・バングラデシュ研究所の間の断絶が予想よりも深いことが本プロジェクトにとって一つの発見であった。ミャンマー研究はこれまでタイ、ラオス、中国(雲南省)など東と北側の隣国との関係には注目してきたが、インド・バングラデシュという西側への関心が希薄である。インド・バングラデシュ研究も同様に、パキスタンなど「南アジア」という枠組みの内では比較研究や国境地域研究が盛んに行われてきたが、ミャンマーへの視点が決定的に欠けている。これはミャンマーに隣接するインド東北部に焦点を当てた研究においても顕著な傾向である。この断絶は近現代になってつくられたものなのか、それとも断絶こそが長い間この山地国境地帯の基本的な状況であったのか今後解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、ウェブサイトの構築やドローンの活用といった技術的な側面を初年度の主な活動と見込んでいたが、長期的維持体制や予算へのインパクトを考慮し、国内外の研究ネットワークとの連携に力を注ぐよう方向転換した。その結果、研究者を招聘するシンポジウムを複数回開催した。5月には国内研究組織「ボーダースタディーズ」と共催で、比較研究の枠組みを議論するシンポジウムを開催した(山形大学)。6月にはインド北東部研究の第一人者である、ネルー大学教授Joy Pachuau氏を招聘し研究会を開催した(津田塾大学、京都大学)。10月には「宗教と境域」というテーマで公開シンポジウムを開催し、本研究プロジェクトからも5名が報告・コメントした(北海道大学)。同時に先行研究のレビューを進め、来年度以降に招聘予定の国外研究者を選び、本プロジェクト独自のネットワーク形成に着手した。これら一連の会合での議論を通して、既存の研究における問題点を洗い出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
5年プロジェクトの2年目における大きな目標は、以下の3点である。①国境の形成経緯および国境線の影響を調査する必要がある。現時点では、この国境地域の研究は、インド、バングラデシュ、ミャンマーと国別に分けられている。この分断の形成そのものを分析していく。② 可能な限り、複数のメンバーによるフィールド訪問を実施したい。国境地域では移動が極めて不便で、複数の国を訪れることが往々にして難しいが中期・長期的には、越境して、複数の場所に慣れ親しんでおくことの効果はとても大きい。研究者がフィールドをお互いに紹介し合うことで、チーム・プロジェクトとしての強みを生かし、全体としての学習・研究効果を高めたい。個別の研究の寄せ集めではなく、新たな発見は難しいかもしれないが、フィールド体験を共有することによって新たな発見が生まれてくる可能性は高まる。③ 単発的な会議だけではなく、国外研究者との連携を強化し、対話が持続する関係を築きたい。国際的プラットフォームを構築したい。この目標に向けて来年度に(できればミャンマーで)国際シンポジウムを開催したい。その結果を、ワーキング・ペーパーとして発表するという流れを想定している。
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