研究課題/領域番号 |
18H03607
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
植野 弘子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (40183016)
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研究分担者 |
三尾 裕子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20195192)
上水流 久彦 県立広島大学, 公私立大学の部局等(庄原キャンパス), 教授 (50364104)
横田 祥子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (80709535)
西村 一之 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (70328889)
川口 幸大 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60455235)
長沼 さやか 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80535568)
中村 八重 東亜大学, 人間科学部, 客員研究員 (00769440)
玉城 毅 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (10507312)
越智 郁乃 立教大学, 観光学部, 助教 (10624215)
田中 大介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (20634281)
川瀬 由高 江戸川大学, 社会学部, 講師 (60845543)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 少子化 / 父系 / 祖先祭祀 / 東アジア / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
1 フィールド調査-メンバーが各自のフィールドにおいて自身の問題関心によって、以下のような調査を進め、成果を得ている。 ①祖先祭祀・祖先観の変化に関しては、台湾では三尾裕子・西村一之が、中国では川瀬由高が、韓国では研究協力者の本田洋(東京大学)と中村八重が、沖縄と奄美では玉城毅が調査を行った。②墓や遺骨の処理における変化に関する研究としては、台湾では植野弘子と西村が、石垣島に来た台湾人の墓については三尾が、鹿児島では上水流久彦が、また東京の永代供養墓については越智郁代が調査を進めた。③葬儀の変化については、田中大介が日本における調査を行った。④少子化による祖先祭祀の変化を考えるため、家族関係・人口政策に注目して、中国において川口幸大・長沼さやかが調査を実施した。⑤父系社会の祖先祭祀における女性の役割に注目して、上水流・植野・橫田祥子が台湾において調査を行った。 2 アンケート調査実施と再検討ー共同研究の特性を生かし、東アジアの祖先祭祀の継承の意識に関するアンケート調査を、日本本土・沖縄・韓国・台湾の大学生、中国からの留学生を対象に実施することとし、2019年度には日本本土において、試験的に実施した。その結果を研究会で検討した際には、海外にいる研究協力者-林承偉(台湾・国立台北芸術大学)、林慶澤(韓国・全北大学校)、李華(中国・延辺大学)も参加し、今後の海外における実施についての意見交換を行った。 3 研究会による課題の展開-研究課題の展開をめざし、2019年6月に鹿児島において研究会を開催し、外部講師による奄美の納骨堂についての報告がなされ、また指宿市における墓制の変化に関して共同実地調査を行った。さらに、11月に外部講師による日本と韓国の葬儀・骨の処理の変化についての報告を受け、議論を行った。 なお、研究協力者の氏名の公開については、本人の了解を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メンバー各員の調査活動は、総じて順調に行われていたが、コロナウイルスの蔓延により、2020年2月以降に予定されていた一部の海外調査が中止され、計画していた研究活動と成果には到達できない状況がうまれた。そこで、一部の経費を2020年度に繰り越したが、コロナ禍の状況は好転せず、海外調査は断念せざるを得なかった。このため、文献研究に切り替えて資料収集と考察を進めた。また、韓国に在住の院生に現地での祖先祭祀の現状と変化に関する報告を依頼し、資料収集を行った。 3回開催された研究会では、東アジアの少子化が引き起こす祖先祭祀・死者供養の変化などについて、最新の情報が寄せられ、それをめぐる非常に活発な論議が繰り広げられた。また、「東アジアにおける祖先祭祀の継承の意識に関するアンケート調査」は、試験的に日本国内で行われ、この検討をもとに、各地域の特徴を踏まえた調査の実施にむけて、準備を行った。 経費の支出に関して、交付申請書の計画内容との差異は、2020年2月以降に予定されていた海外調査が取りやめとなり、その経費が繰越金となったことである。繰越金は、インターネットによる資料収集のための環境整備、図書購入などの物品費、また前記の韓国の祖先祭祀に関するレポートの謝礼として使用された。繰越金以外の経費は、ほぼ計画通りに支出された。
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今後の研究の推進方策 |
本科研プロジェクトの基本的研究手法である海外調査は、世界的なコロナウイルスの蔓延によって、その実施可能性は不透明である。そこで、中心的研究手法をフィールド研究から文献研究へと切り替え、課題の追究を継続していく。海外調査は、状況が好転した段階で実施を図る。また、国内で可能な調査は、推進していく。 今後、プロジェクト全体として検討されるべきは、理論的枠組みの再検討である。このため、これまでの研究活動を通じて抽出された共通の課題―父系理念の再考、近代性と祖先祭祀の関連、台湾と韓国の比較検討などについて、研究会において議論を行い、変容する親族・家族・祖先祭祀を踏まえた理論構築を目指していく。研究会は、オンラインによって開催する。 研究プロジェクトの共同性を生かした活動として、「東アジアにおける祖先祭祀の継承の意識に関するアンケート調査」が進められているが、2020年度には、日本本土と沖縄において大学生を対象に試験的に行われており、また韓国・台湾においても実施されている。今後、日本本土と沖縄において、さらに中国大陸からの留学生に対しても、本格的な調査を実施していく。 アンケート結果の公開は、漸次、行う予定であり、そのためにも、本科研プロジェクトのホームページを開設する。
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