研究課題/領域番号 |
18H03620
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
城山 英明 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (40216205)
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研究分担者 |
松尾 真紀子 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任准教授 (40422274)
江間 有沙 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任講師 (30633680)
ヘン イークァン 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (80780618)
谷口 武俊 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員教授 (50371216)
岸本 充生 大阪大学, データビリティフロンティア機構, 教授 (60356871)
永井 雄一郎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (50749033)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報技術 / バイオテクノロジー / 分散型ガバナンス / 情報共有 / ホライゾンスキャニング / 民間主体 |
研究実績の概要 |
R2年度事例研究グループ1では、日本におけるAIガバナンスの全体像について”AI Governance in Japan”(Towards Regulation of AI Systems, Ad hoc Committee on Artificial Intelligence Council of Europe)を公表した。実証的にはAIのリスクを識別し、考えるためのフレームワークとしてリスクチェーンモデルを開発し、具体事例の検討を行うとともに、「AIサービスのリスク低減を検討するリスクチェーンモデルの提案」として政策提言を行った。また、AIガバナンスにおいて重要な要素となるデータガバナンスに関する研究も進めた。 事例研究グループ2は技術動向の調査を深め様々な事例を調査した。成果の一部は「日本におけるゲノム編集技術応用プロダクトの規制上の取扱い明確化の経緯と課題の整理」として公表した。全体総括グループでは、比較対象として宇宙技術ガバナンス研究を国連の宇宙空間平和利用委員会が設立される過程に即して行い、新興技術の国際関係レベルでの安全保障上のチャレンジと対応法についても検討を進めた。また新興技術の社会実装のために科学と政策、及び科学と社会の間のギャップを可視化し、それらを埋めるためのテクノロジー・アセスメントやレギュラトリーサイエンスの手法の制度化に関する国際比較や新興技術ガバナンスの前提となる科学技術ガバナンスにおける専門家の役割についての検討も行った。 R2年度に予定していた海外調査は新型コロナウイルス感染症のためR4年に実施した。米国MITにおける新たなバイオテクノロジーに関する非公式性の高いネットワークによるリスクガバナンスに関するヒアリング調査、シンガポールの首相府戦略未来センターにおけるホライゾンスキャニング、未来研究手法とその活用に関するヒアリング調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例研究グループ1においては、AIといった新たな情報技術のガバナンスについて概ね順調に調査が進んでいる。特に様々な分野におけるAIを活用した具体的サービスに関して事例に即したリスクと対応の分析が国内事例を中心に蓄積された。事例研究グループ2においては、新たなバイオテクノロジーに関して、技術の進展、その利用法、ガバナンス上の課題に関して、概ね順調に調査が進んでいる。特に、具体的な技術の進展・利用に即して、どのような潜在的課題が生じているのかの洗い出しが進んだ。また全体統括グループにおける、宇宙分野におけるリスク対応との比較や、新興技術のリスクガバナンス対応のためのホライゾンスキャニング、テクノロジー・アセスメント、レギュラトリーサイエンス、科学技術ガバナンスといった共通の枠組みに関する検討についても、概ね順調に調査が進んでいる。 新型コロナウイルス感染症のため実施を遅らせた海外調査はR4年度に実施できた。MITでは民間主導の分散型ガバナンスであるiGEM (International Genetically Engineered Machine) についてヒアリングを行うことができた。iGEMは合成生物学に関するコンペを行う組織であるが、その運用の中でプロジェクト提案の安全性、安全保障面等での様々な含意の検討を行い、対応を促してきた。技術に関するホライゾンスキャニング能力を活用した適応的リスク管理アプローチの具体的あり様を確認することができた。シンガポール首相府戦略未来センターでは、シンガポール政府における新興技術や関連する社会・国際関係動向に関するホライゾンスキャニング、シナリオプランニング等を活用した未来研究手法についてヒアリングを実施。戦略未来研究においては一定の独立性、幅広い視野持つ人材の確保、外部とのネットワークも活用した能力構築が重要であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(R3年度)においては、新たな情報技術に関する事例研究グループ1、新たなバイオテクノロジーに関する事例研究グループ2において、さらなる事例分析の蓄積を進める。その際、国内における事例に加えて、海外における事例、国際的対応に関する事例の分析を深める。 また全体統括グループにおいては、宇宙といった技術分野におけるリスクへの対応も含めた分野間の比較分析も踏まえ、AIや新たなバイオテクノロジーといった新興技術のリスクガバナンス対応のための共通の枠組みと課題に関する検討をより深化させる。その際、ステークホルダーからのフィードバックや歴史的事例も参照する。また、補足的な事例調査や国際学会等における意見交換も行う。また、プロジェクトの取りまとめを念頭に、AI等の新たな情報技術、新たなバイオテクノロジーのガバナンスを横断的に比較するとともに、これらに共通な新興技術ガバナンスの仕組みや課題、また、このようなガバナンスに不可欠なホライゾンスキャニングをはじめとする未来研究能力のあり方や政府レベルでの組織化について議論する国際ワークショップを開催する。同時に、研究成果の国際的発信にも努める。
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