研究課題
これまでに、我々は、低アミノ酸栄養状態の動物の肝臓でIRSの分子種の一つであるIRS-2のタンパク量が増加することを発見している。そこで、この現象が、肝細胞で再現できるかを検討した。ヒト肝がん由来細胞株(HuH-7)を血清やアミノ酸を全く含まない培地(Zero培地)で24時間培養したところin vivo肝臓と同様に、IRS-2タンパク量が顕著に増加し、この結果から、「肝細胞自身がアミノ酸欠乏を認識し、IRS-2を増加させる」ことがわかった。そこで、HuH7細胞に、種々の脱ユビキチン化酵素(USP)のsiRNAを導入して発現抑制した後、Full培地またはZero培地で培養して細胞抽出液を調製、IRS-2量を測定した。その結果、USP15を発現抑制すると、Zero培地で培養することによるIRS2のタンパク量増加が阻害され、このことは、Zero培地での培養によるIRS-2タンパク量増加機構の一部にUSP15が関与している可能性を示していた。アミノ酸欠乏に応答してIRS-2の増加によりインスリン様シグナル経路の下流も増強され、トリグリセリド(TG)の蓄積が確認されたが、IRS-2をsiRNAでノックダウンしても、TG蓄積は影響を受けなかった。IRS-2の増加の生理的意義を検討するために、Full培地またはZero培地でHuH-7細胞を長時間培養し、サイトカインアレイを用いて培養上清中の分泌タンパク量を調べた結果、多くのサイトカインの分泌量に変化が観察された。以上の結果より、アミノ酸欠乏に応答して増加するIRS-2は、現在受け入れられているインスリン様シグナル経路の仲介分子としての機能とは異なる未知の機構を介して、サイトカインの分泌を制御していると結論した。このようにユビキチン化修飾によるIRS量の調節は、アミノ酸に応答した生理反応にも重要な役割を果たしていると考えられた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 11件) 備考 (1件)
Front. Endocrinol.
巻: 11 ページ: 892140
10.3389/fendo.2022.892140
Cells
巻: 11 ページ: 1523
10.3390/cells11091523
バイオサイエンスとインダストリー
巻: 8 ページ: in press
化学と生物
巻: in press ページ: in press
Nutrition
巻: 85 ページ: 111130
10.1016/j.nut.2020.111130
Biochimie
巻: 187 ページ: 25 -32
10.1016/j.biochi.2021.05.007
iScience
巻: 24 ページ: 102778
10.1016/j.isci.2021.102778
J Biol Chem
巻: 197 ページ: 101179-101191
10.1016/j.jbc.2021.101179
(実験医学増刊)「個人差の理解へ向かう肥満研究」
巻: 39 ページ: 817-822
http://endo.ar.a.u-tokyo.ac.jp/