研究課題
本研究においては、細胞社会の恒常性維持に関わる細胞競合と接触阻害という2つの現象を統合的に制御する分子機構を解明し、新たな融合研究領域の創出を目指している。昨年度までの研究によって、正常細胞と変異細胞が混在する上皮細胞において、カルシウム濃度が特異的に制御されており、それが、カルシウム依存的なconventional PKCの活性化を通じて、AHNAK2のリン酸化を引き起こしていることを明らかにした。このように、本研究が目指す「細胞社会の恒常性維持に関わる細胞競合と接触阻害という2つの現象を統合的に制御する分子機構の解明」に大きく前進することができた。今年度からは、これまでの研究成果をさらに発展させるとともに、新たな接触阻害の制御因子探索のために、ファージ抗体ディスプレイスクリーニングを開始した。ファージ抗体ディスプレイ法は、バクテリオファージのコートタンパク質遺伝子に抗体の可変領域遺伝子を組み込み、抗体をファージ表面に提示する手法である。研究協力者の向主任研究員(カン研究所)が作成した多様なファージ抗体を含むファージライブラリの中から細胞パニングにより、正常細胞と変異細胞の混合培養下の細胞に特異的に結合活性を持つファージクローンを単離、濃縮し、単離されたファージクローン抗体を用いて免疫染色を行い、正常細胞と変異細胞の境界部位に特異的な染色を示す抗体を同定した。その結果、COL17A1という膜タンパク質を認識する抗体であることが分かった。このように、がん原性変異によって接触阻害の抑制が起こる分子メカニズムの解明の足がかりとなる知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
新たな接触阻害の制御因子探索のために、ファージ抗体ディスプレイスクリーニングを開始した。ファージ抗体ディスプレイ法は、バクテリオファージのコートタンパク質遺伝子に抗体の可変領域遺伝子を組み込み、抗体をファージ表面に提示する手法である。研究協力者の向主任研究員(カン研究所)が作成した多様なファージ抗体を含むファージライブラリの中から細胞パニングにより、正常細胞と変異細胞の混合培養下の細胞に特異的に結合活性を持つファージクローンを単離、濃縮し、単離されたファージクローン抗体を用いて免疫染色を行い、正常細胞と変異細胞の境界部位に特異的な染色を示す抗体を同定した。その結果、COL17A1という膜タンパク質を認識する抗体であることが分かった。このように研究計画は概ね順調に進展している。
今後は、スクリーニングをさらに継続し、新規の接触阻害制御因子の探索を行うとともに、COL17A1とがん原性変異による接触阻害抑制の機能的関連について、様々な観点から研究を進めていく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件)
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